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調布市の地域情報ポータルサイト ちょうふどっとこむ

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りこうすぎた王子  2010年08月25日


アンドリュー・ラング 著 福本 友美子 訳
岩波書店 2010年 672円


 パントウフリア国の三人の王子のうち、いちばん上のプリジオは、洗礼式のお祝いにきた年よりの
妖精の呪いのせいで、りこうすぎたために、国中の人から嫌われていました。そんなプリジオ王子が、やさしくて美しいロザリンドに出会ってからはすっかり変わり、ロザリンドのために、ファイアードレイクという火をふく竜を退治することになります。王子が考えついた竜退治の方法とは…。

 「青の童話集」など色の名前の付いた童話集で知られるイギリスの文学者・民俗学者ラングによる創作童話。途方もないスケールの王子の竜退治とともに、王子を助ける「千里ぐつ」「かくれぼうし」「まほうのじゅうたん」といった魔法の道具の数々も、読み手を夢中にさせます。ロバート・ローソンによる挿絵も魅力的です。

 本書は、1951年に岩波少年文庫の1冊として、光吉夏弥訳、塩田英二郎の挿絵で出版され、長い間親しまれてきましたが、その後、入手できない期間を経て、今年、訳・挿絵を新たにして刊行されたものです。

児童書 おすすめの1冊 高学年向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『りこうすぎた王子』を図書館で探す ■

祭りの場  2010年08月10日


林 京子 著
講談社 1988 1260円


 昭和二十年八月九日、長崎市に投下された原子爆弾の爆圧などを観測する、観測用ゾンデの中に入っていた降伏勧告書文の文言から、この作品は書き始められる。そして、アメリカ側の編集による原爆記録映画の最後、「かくて破壊は終わりました」を結びの言葉とする。

 このことからも分かるように、小説というより記録文学に近いものがある。そのことをよりいっそう強く感じるのは、被爆当時はまだ解明されなかった事実を、次々と文中に挟み込んでいることだ。

 作者自身が被爆し、逃げまどうなかで見た地獄絵図を描くと同時に、出来うる限りの情報を作中に投入する。そこには事実を事実として正確にとらえ、それを間違いなく伝えたいという作者の強い意思が感じられる。

 作者は、爆心地から一・三キロ離れた地点で被爆した。学徒動員として三菱兵器大橋工場にいたのだが、その工場には七千五百名が働いていた。そのうち六千二百名が行方不明だという。
 〈昭和二十年九月二十四日以後の調べである〉という言葉が添えられている。

 「私」のいる工場の建物の前がコンクリートの広場になっていて、その日、そこでは、出陣学徒を戦場に送る無言の踊りが踊られていた。踊りの輪には大学生も混ざり四十人はいたという。
 原爆投下後、〈広場で出陣の踊りを踊っていた学徒らは即死、火傷の重傷者は一、二時間生きた。〉とある。

                       多摩川読書会   青木 笙子

読書会おすすめの一冊。

紹介:アカデミー愛とぴあ

■ 「祭りの場」を図書館で探す ■

びんの悪魔  2010年07月25日


R.L.スティーブンソン著 よしだみどり訳
福音館書店 2010年 1050円


 『宝島』『ジキル博士とハイド氏』などで知られる、R.L.スティーブンソンの新たな邦訳作品が出版されました。不思議なびんをめぐる物語です。

 死ぬ前に必ず売ること、そして、買値より安く売ること。この二つの条件で売買される「何でも望みのかなうびん」を手にした男ケアウエ。

 あるときは自らの物欲を満たすため、またあるときは愛する人を守るため、彼はびんを買うことや手放すことに奔走します。

 最後にびんを手元に残し、「永遠の地獄の炎に焼かれる」という苦行を負うのは誰なのか?人生をかけた「ババ抜き」の結末は、読んでのお楽しみです。


児童書 おすすめの1冊 高学年向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『びんの悪魔』を図書館で探す ■

夏の花  2010年07月10日


原 民喜 著
集英社 1993 380円


 原爆の悲惨さは言葉では言い尽くせない。どれだけ多くの言葉を費やしてみても、現実のほうが遙かに超えている。そうであっても、作家はあの無惨な人々の姿を書かずにはいられない。

 原民喜はこう書いている。「原子爆弾の惨劇のなかに生き残った私は、その時から私も、私の文学も、何ものかに激しく弾き出された。この眼で視た生々しい光景こそは死んでも描きとめておきたかった」と。

 〈私は街に出て花を買うと、妻の墓を訪れようと思った。〉
 この作品はこういう書き出しで始まる。「私」は墓に供えるために黄色い花を手にしている。
 その二日後、「私」は原爆に襲われる。厠にいたため一命を拾った「私」は、地獄と化した光景に次々と出遭う。

 〈男であるのか、女であるのか、殆ど区別もつかない程、顔がくちゃくちゃに腫れ上って、随って眼は糸のように細まり、唇は思いきり爛れ、それに、痛々しい肢体を露出させ、虫の息で彼等は横たわっているのであった。〉
 〈川の中には、裸体の少年がすっぽり頭まで水に漬って死んでいたが、その屍体と半間も隔たらない石段のところに、二人の女が蹲っていた。その顔は一倍半も膨張し、醜く歪み、焦げた乱髪が女であるしるしを残している。〉
 〈バスを待つ行列の死骸は立ったまま、前の人の肩に爪をたてて死んでいた。〉

 むごたらしい光景を描いているにもかかわらず、不思議な静謐さが作品全体に流れている。それだけに原爆の怖さがよりいっそう胸に迫ってくる。

                       宮の下読書会   青木 笙子

読書会おすすめの一冊。

紹介:アカデミー愛とぴあ

■ 「夏の花」を図書館で探す ■

ライオンとであった少女  2010年06月25日


バーリー・ドハーティ 著 斎藤倫子 訳
主婦の友社 2010年 1680円


 それぞれ別のアフリカ・タンザニアの黒人と白人の間に生まれた二人の少女の話が交互に語られる物語。

 アベラは9歳、タンザニアの田舎に住む少女。父の死後,母を連れて病院へ行く途中白人の女性が見かねてお金をくれたにもかかわらず,その母もエイズで亡くなった。アベラの人生は転がるように変わっていく。突然帰ってきた叔父はイギリスでの不法滞在を合法化するため実子と偽ってアベラを無理やりイギリスに連れ出す。

 アフリカを遠く離れアベラの居場所はどこにもなかった。外に出ることも姿を現すこともできない生活が始まるがアベラは檻のような部屋から飛び出した。表を歩く子どもたちにくっついて行った先の学校でアベラはわずかな英語力で自分の身の上を訴えた。アベラは正式にイギリスで暮らすことが許され,養子縁組で里親が見つかるまで仮里親の世話になるが,この家庭にはアベラのような子どもが出たり入ったりしていた。

 祖母のもとで暮らしたいアベラは,タンザニアに帰ろうと決心し仮里親のもとを逃げ出した。途中危険な男の手を逃れ助けられた家でアベラははじめて担当のソーシャルワーカーに出会った。このワーカーこそ母を助けようとしてくれたあの白人女性だった。そしてもっともアベラにふさわしい里親が見つかることになる。

 一方ローザは13歳,イギリスのシェフィールドに住む少女。母親と二人暮らしだが,近くに住む祖父母にも愛情を受けて,母娘共通の趣味を楽しみながら,豊かに暮らしていた。だが,ローザの悩みは母が里子を欲しがっていること。自分の知らないうちに「養子縁組協会」のカウンセラーに相談していた。ローザは自分がいるのに,なぜ母は他の子どもを欲しがるのか分からないし許せない。カウンセラーはローザに本当の気持ちを素直に書くようにとノートをくれた。やがてローザは母が本心から愛情深く困っている子どもを助けたい一心であること,その母の気持ちを理解して,ローザは一歩成長し養子を迎えることを承諾する。

 厳しい環境の中に生まれ必死に生きるアベラとそれと対照的に豊かな生活をするローザ,二人の暮らしと心の中を丁寧に描いた作品。悲惨な生い立ちながらもそれに立ち向かっていくアベラの勇気と賢さに感動するとともに,母も祖父母もカウンセラーもローザに無理強いをせず,ローザの気持ちが自然に新しい家族を受け入れられるように変わっていくことを許容する環境がすばらしい。

 タイトルは次の事件から取ったと思われる。母親を失い抜け殻のように歩くアベラの目の前に突然ライオンが現れた。この危機一髪のとき,「強くなりなさい。私のアベラ。強くなるのよ」と母の言葉が何度も響き,父も祖母も傍らに立ち自分を支えているのを感じた。死にたいと思っていたアベラは,ライオンとであったとき実は自分が生きたいと思っていることを知ったのである。


児童書 おすすめの1冊 中学生向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『ライオンとであった少女』を図書館で探す ■

密約・外務省機密漏洩事件  2010年06月10日


澤地 久枝 著
岩波書店 2006 1050円


 今から三十四年前、昭和四十七年五月十五日、佐藤内閣のもとに本土復帰した沖縄。その返還にあたり、本来、米国が支払うべきであった返還軍用地復元費用の四00万ドルを、日本はその肩代わり支払いに応じ、アメリカが支払ったように見せかける外交文書の作為をおこなった。

 佐藤内閣の命取りともなる「密約」の存在は、国会でも大問題となるが、その証拠をつかんだ毎日新聞記者の西山太吉と、それをもたらした外務省事務次官の蓮見喜久子は、秘密電文持出しにかかわる国家公務員法違反に問われて告発される。起訴状にある「ひそかに情を通じ」云々という表現によって新聞の論調もかわり、「機密漏洩」の手段だけが、ことこまかに詮議され、政府側の責任はみごとにすりかわっていく。

 蓮見事務官と著者は同年同月生れで、十日あまり著者が早く生まれている。苦学生としての青春と闘病、という共通する時間も持っている。同性としてその置かれた立場に寄り添おうと努め、立ち直ってもらいたいとの思いが出発点だったと著者は書いている。

 本書は、一九七八年八月、中央公論社より刊行、つづいて中公文庫に入る。その後長く絶版状態におかれていたが、今年二〇〇六年八月、岩波現代文庫に入った。

                       緑ヶ丘読書会 加 文子

読書会おすすめの一冊。

紹介:アカデミー愛とぴあ

■ 「密約・外務省機密漏洩事件」を図書館で探す ■

世の中への扉 野生動物のお医者さん  2010年05月25日


齊藤 慶輔 著
講談社 2009年 1155円


 午後4時,北海道にある「釧路湿原野生生物保護センター」に「動けなくなっているオジロワシが発見された」との連絡が入りました。センターの獣医師である齊藤先生は,オレンジ色に染まる釧路湿原を車で出発して,2時間以上走り続けオジロワシを保護してくれている動物病院に到着しました。帰りも長時間の道のりです。途中の駐車場で車を止め,ワシのショックと脱水症状をやわらげるため注射を2本打ちました。センターに着くと休む間もなく早速治療開始です。オジロワシは重体でしたが,次の日には目を開き,その後肉の塊を差し出せば夢中で飲み込むまでに回復しました。

 「野生動物をどう治すか」これには教科書もお手本もありません。では,どうしたらよいか。齊藤先生は,野生の鳥の自然な状態をよく知っていると,目の前の鳥が今どういう状態にあるのかがよく分かると述べています。

 健康な鳥は体を冷やさないように片脚立ちをしています。ですから目の前の鳥が長時間立つ脚を代えていなかったら,上げているほうの脚を動かせないような痛みを抱えている可能性があるというのです。また,野生動物用の医療機器はありませんから,集中治療室には赤ちゃん用の保育器を置いて治療にあたっています。

 野生動物のお医者さんは,病気を治して終わりというわけにはいきません。何故なら,元気になった鳥を「野生復帰」させなくてはならないからです。でも,すべての鳥を野に帰せるわけではありません。その時はどうするか。この本は私たちが知らない,いろいろなことを教えてくれます。

 幼少期をフランスで過ごした齊藤先生がどうして野生動物のお医者さんになったか,自分の仕事を理解してもらうためにどういう努力をしてきたのか・・・映画「ウルルの森の物語」のモデルとなった齊藤先生の魅力が伝わってくる1冊です。


児童書おすすめの1冊 小学校高学年向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

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