大力(だいりき)のワーニャ
投稿日:2014年11月10日『大力(だいりき)のワーニャ』
オトフリート・プロイスラー作 大塚勇三訳
岩波書店・2014年 720円
昔,ロシアのお百姓の家に三人の息子がいて,末の息子はワーニャと言いました。彼は,仕事嫌いの途方もない怠け者でした。ある日ワーニャが森に行くと,盲目の老人に出会います。老人は「ここからとおくの,ある国で,皇帝の冠がおまえを待っている」とワーニャに告げます。そのために必要なことは「怠ける」ことで,パン焼きかまどの上で横になって,7年間決して誰とも喋らず,ひまわりの種以外食べず動かないことでした。ワーニャはその言いつけを守り,何かと邪魔が入りますが,老人の助けや自分に怪力がついたことによって免れ,「ある国」を目指して旅に出ます。
「怠ける」ことが,実はワーニャにとって大きな力を蓄える大切な時間だったということが感じられる物語です。多くの困難が待ち受けている旅ですが,誰かが助けてくれたり,自分の力で切り抜けたりと読む者に勇気を与えてくれます。行く道をコインによって決めるなど,ワーニャの大らかさも物語に味わいを添えています。