机の上の仙人-机上庵志異-

中学生・高校生向

投稿日:2014年10月15日

『机の上の仙人-机上庵志異-』
佐藤さとる著 岡本順画 ゴブリン書房
2014年6月 1400円

ある日,童話作家である著者の机の上に,小さな家が突然現れ,戸口から小さな犬とおよそ二寸(約六センチ)余りの小さな人が出てきます。その人は自らを「仙人のようなもの」と言い,机の上の庵(いおり)に住んでいることから「机上庵(きじょうあん)」と名乗ります。著者が小さな犬を観察してみると,その犬は著者が祖母からもらった古い書物の中を出入りしているようでした。「机上庵先生」は,その書物の中の物語から犬を連れ出したのだと言います。それ以来,机上庵先生は時折庵から出てきては,書物に書かれている物語を語ってくれるようになります。
物語は,中国の『聊斎志異(りょうさいしい)』という奇譚集(きたんしゅう)が元になっています。鬼の島に漂流した漁師が女鬼と夫婦になる「鬼ヶ島異聞」,男が襖絵の中へ入ってしまう「墨絵浄土」など,不思議な物語が15話収められた連作短編集です。最後の話「夢幻反転」では,著者が書物の中へ…。
本書は,「だれも知らない小さな国」刊行以来,ファンタジー文学の第一人者として活躍する著者の最新作です。机上庵先生の語りが読者を幻想的な世界へと誘い,読後に不思議な余韻が残る1冊です。

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