戦場のオレンジ
投稿日:2014年7月11日『戦場のオレンジ』
エリザベス・レアード作 石谷尚子訳 評論社
2014年4月 1300円
1975年頃,レバノンの首都ベイルートは民族や宗教の対立など複雑な問題がからんで内戦状態になり,町はグリーンラインと呼ばれる境界線で分断され,行き来ができない危険な状態でした。
10歳の少女アイーシャは,おばあちゃんと母さん,二人の弟の5人で,ベイルートに暮らしていました。父さんは外国に仕事を探しに行ったままです。ある日,突然の爆撃で家は破壊され,逃げ遅れた母さんは行方不明になってしまいます。破壊された町で,行くあてのない一家を救ってくれたのは,ザイナブおばさんと娘のサマルでした。ザイナブおばさんは,避難してきた人がたくさん住んでいるアパートに居場所を作ってくれ,一家を温かく迎え入れてくれたのです。サマルは耳の聞こえない少女でしたが,すぐにアイーシャと心が通いあって,姉妹のように仲良くなります。
そんな時,頼りにしていたおばあちゃんが病気で倒れ,薬がなければおばあちゃんは死んでしまいます。アイーシャは,おばあちゃんを助けるため,薬を手に入れようと,たった一人で危険なグリーンラインを超えて,敵側にあるライラ先生の病院をめざします……。
激しい内線の中,10歳の少女が危険地帯を潜り抜ける緊迫感と勇気とが伝わってきて,一気に読み進むことができます。戦争の悲惨さを強く訴える一方で,アイーシャをとりまく人たちが敵味方なく協力してくれるなど,救いと希望も感じられます。
高学年向き。図書館おすすめの1冊です。