山のトムさん-ほか一篇-

児童書(こども)

投稿日:2011年10月25日

石井桃子作 福音館書店
2011年 700円

戦後間もなくのこと,北国のある山あいに,開墾者として移り住んだ家族がありました。小学生のトシちゃんと,トシちゃんのお母さんと,お母さんの友達のハナおばさんと,おばさんの甥のアキラさんの4人です。
山の開墾者たちは,ネズミに頭を悩ませていました。というのも山の家にはたくさんのネズミがいて,夜昼構わず家じゅうを駆け回るだけでなく,人が寝ていればその鼻をかじるし,配給のお米も,地面にまいた作物の種も,本も,戸棚も,着物も,グローブも,おひなさまも,何でもかんでも食い荒らしてしまったからです。
ネズミとりもいろいろと試してみましたが,どれも効果がありません。そこでもらわれてきたのが,子ネコのトムでした。
えものとりの訓練のためにカエルをとってやってみせていたら,自分ではとらずに「ミャーオー!ミャーオー!」と鳴きたて,「とってくれよう!」とせがむようになってしまったり,お腹の病気にかかって散々な目にあったり,おばさんにくっついて町までやってきたものの,怖くなって逃げ出してしまったり……。トムが引き起こす騒動や武勇伝のおかげで,一家には笑いが絶えません。
著者自身の開墾生活を元に,子ネコのトムが成長し,かけがえのない家族の一員となるまでの出来事を丁寧に描いた作品です。
1968年に単行本として出版された『山のトムさん』に,同じ一家の登場する「パチンコ玉のテボちゃん」を加えて文庫化されました。
児童書 おすすめの1冊 小学校高学年から
紹介:調布市立図書館 児童担当

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