『ほこりまみれの兄弟』
投稿日:2011年5月26日孤児の少年ヒューは意地悪なおばさんに厄介者扱いされ、辛い毎日を過ごしていました。
ある日おばさんが愛犬アルゴスの頭を殴って殺してやると言ったとき、ヒューはアルゴスとツルニチニチソウの鉢植えを持って家を出ました。ツルニチニチソウはとても小さかったたときに死んだお母さんの大好きな花だったのです。
ヒューのお父さんは牧師でしたがヒューが8歳のときに亡くなりました。お父さんはヘリティジという人の給費生としてオックスフォードで学んでいました。給費生というのは裕福な友人と一緒に暮らし、同じ教育を受け同じものを食べる代わりに、その友人の書生のようなことをするのです。お父さんは学んだ日々のすべてを話し、ヒューにも同じ道を進むように勧めていました。
オックスフォードを目指したヒューが空腹で倒れそうになったとき、親切な旅の一座が彼を助けてくれました。彼らはヒューを「ほこりまみれの兄弟」と呼びかけて優しくしてくれ,ヒューはこの一座の仲間となって、彼らと旅をともにします。
行く先々でひもじい思いをしたり、わくわくしたり,失敗して親方に鞭打たれたり、アルゴスを失いかけたりと多くの経験をして、幼いながら一人の人間として自立して生きていく方法を身につけていきます。そしてある日,ヘリティジ氏が現れて,息子の給費生にならないかと誘ってくれます。ヒューはそれを一旦断りますが・・・。
イギリスの優れた児童文学者サトクリフの若い頃の作品です。一座が巡るイングランド各地の歴史的出来事や人物、森の木々や花々,野生の生き物が豊かに描写されていて魅力的です。少年ヒューの成長とヒューに心を寄せる身近な大人たちがすばらしく,暖かい愛情にあふれた家族との出会いが最後に描かれ、満足できる結末となっています。
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紹介:調布市立図書館 児童担当