密約・外務省機密漏洩事件

一般書

投稿日:2010年6月10日

澤地 久枝 著
岩波書店 2006 1050円

今から三十四年前、昭和四十七年五月十五日、佐藤内閣のもとに本土復帰した沖縄。その返還にあたり、本来、米国が支払うべきであった返還軍用地復元費用の四00万ドルを、日本はその肩代わり支払いに応じ、アメリカが支払ったように見せかける外交文書の作為をおこなった。
佐藤内閣の命取りともなる「密約」の存在は、国会でも大問題となるが、その証拠をつかんだ毎日新聞記者の西山太吉と、それをもたらした外務省事務次官の蓮見喜久子は、秘密電文持出しにかかわる国家公務員法違反に問われて告発される。起訴状にある「ひそかに情を通じ」云々という表現によって新聞の論調もかわり、「機密漏洩」の手段だけが、ことこまかに詮議され、政府側の責任はみごとにすりかわっていく。
蓮見事務官と著者は同年同月生れで、十日あまり著者が早く生まれている。苦学生としての青春と闘病、という共通する時間も持っている。同性としてその置かれた立場に寄り添おうと努め、立ち直ってもらいたいとの思いが出発点だったと著者は書いている。
本書は、一九七八年八月、中央公論社より刊行、つづいて中公文庫に入る。その後長く絶版状態におかれていたが、今年二〇〇六年八月、岩波現代文庫に入った。
緑ヶ丘読書会 加 文子
読書会おすすめの一冊。
紹介:アカデミー愛とぴあ

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