ぼくだけの山の家
投稿日:2009年12月25日五月のある日,少年サムはニューヨークの家を出て曽祖父の住んでいたキャッツキル山脈にある深い森に向かいました。手にしていたのは,ペンナイフ,ひも一巻き,斧,火打ち石と火打ち金,アルバイトでかせいだ40ドル。サムは森の中で一人で生活をしようと思ってやってきたのでした。
最初は火をおこすこともうまくいきませんでしたが,ビルというおじいさんに教えてもらい,なんとかうまくできました。ベイツガという大木のうろをすみかとし,カラスの巣から卵をとってきて食べたりします。やがてハヤブサのフライトフルという相棒もでき,うさぎ,木の実などの食べ物を調達できるようになります。またヒッコリーの木ぎれを煮つめて塩を作ることにも成功しました。そんな中でサムの大好物となったのはカエルです。やわらかく煮たカエルの肉に野生タマネギ,スイレンのつぼみ,ノラニンジンを加え,ドングリの粉でとろみをつけ,カメの甲羅をお皿にして盛りつけます。
クリスマスには心配したお父さんが様子を見に来てくれますが,サムがちゃんと生活しているのをみて安心して戻っていきます。そうして一年たったある日のこと,サム一人での森の生活は終わりを告げることになりますが……。
大自然のなかで自分なりの工夫をし,たった一人で生活をする少年の成長していく姿にぐいぐい引き込まれ,一気に読み進みます。サムの自立を認めてくれるお父さん,サムと一緒に曽祖父の森を見つける手助けをし,サムの伸びすぎた髪の毛を切ってくれる図書館司書のミス・ターナーさん,偶然出会った大学の先生のバンドウさんなど,サムをさり気無く応援してくれる大人たちの存在も魅了的です。
サムと一緒に冒険をしたような満足感を味わうことができる作品です。
紹介:調布市立図書館 児童担当