ノーザンライツ

一般書

投稿日:2007年7月10日

星野道夫著  新潮社 (2000/03)

ノーザンライツとはオーロラのこと。アラスカの空に輝く北極光のことを原住民の人々はそう呼んでいる。
一九六〇年代こゝアラスカ極北の地に核実験場化が計画された(プロジェクト・チュリオット)。しかし先住民族の人々にはくわしく知らされていない。
アラスカに魅了されここに住むアメリカ人女性ジニーとシリア。それに若き生物学者ビル。彼等は先住民族と共にこれを阻止する運動に立ち上がる。
カナダとの国境沿いの原野に点在するエスキモー、グッチインデアン。彼等は文明を拒否し極北の地にひっそりと今も生きる。その彼等の抱える問題(核実験)がそっくりそのまゝ私達の問題であると云う驚き。カメラマンとしての著者のするどい眼が捉えた現代のおそろしさを痛感。来るべき時代の中で苦悩しながらも何か良い方向を見つけて行こうとする先住民達の姿に心打たれる。
『どんな人間の人生も語るに値するものだ』と云う著者の大自然とそこに生きる人々への暖かいまなざしと心情に深く心動かされる作品である。
あまりにも早い彼の死が哀しい。
宮の下読書会  田中智子

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