ぼくはマサイ ―ライオンの大地で育つ―
投稿日:2007年2月23日著者は遊牧民の子どもとしてケニアの北東部に生まれる。父と2人の母,3人の兄の家族とともにアフリカの草原で牛を飼い,マサイ族の伝統と文化を大切にした暮らしをしていた。体に布をまとい手には槍を持ち,牛のために良い草や水を求めて一日に数十キロも歩き,時にはライオンに襲われることもある暮らしは原始的にも思えるが「いちばん公平ですばらしいシステムをもった社会だと思っている」と著者は言う。村ではみんなが助け合い,子どもも大人も役割に応じて働き,年長者を敬い,誰も飢えることがなく,みんなが平等な社会なのだ。
著者は6歳のとき,一家族から一人が学校に行くというケニア政府の方針で,西洋風の教育をする学校に行き始める。マサイの伝統文化を基盤に持ちながら,西洋文化をバランスよく取り入れる賢明さ,旺盛な好奇心や人一倍の努力によりハイスクールに進学,やがて十代後半でアメリカの大学に進むことになる。現在は一年の半分はアメリカで教鞭を執り,のこりの半分はケニアで社会貢献活動を精力的に行っているという。
著者の人間的な魅力にあふれた半生が,マサイの興味深いエピソードとともに語られ,生きることの素晴らしさを感じさせてくれる1冊である。
対象は小学校高学年以上。
紹介:調布市立図書館 児童担当