小やぎのかんむり

児童書(こども)

投稿日:2016年9月23日

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市川朔久子著 
講談社 2016.4 1400円

 主人公の夏芽(なつめ)は,私立の中高一貫校に通う,中学3年生の女の子です。夏休みの間,友達の香子(かこ)と1週間の勉強合宿に行こうと計画していました。しかし,交通事故に遭ったばかりの父親から「お父さんの世話があるだろ」と言われ,合宿に行くことはできなくなりました。

そんな偉そうな父親と,父親に従ってばかりの母親から逃れるように,夏芽は,宝山寺(ほうざんじ)というお寺へサマーステイに行くことにします。きっと自分の他にも参加者がいるだろうと思いながら集合場所で待っていると,夏芽の他には誰もいません。参加者は,夏芽ただひとりだけでした。

 宝山寺では,ちゃらんぽらんで住職らしくないタケじい,優しくて学校の先生みたいな穂村さん,タケじいの孫の美鈴さん,父親の虐待から守るために預けられた雷太,農業学校に通う葉介(ようすけ),そして,葉介が連れてきた3匹のヤギに出会います。

3匹は,いちばん大きいヤギはビンゴ,中くらいのヤギは後藤さん,小さいヤギはクララという名前で,宝山寺の雑草を食べるためにやって来ました。まるで,実在する絵本に登場するようなヤギたちは,夏芽や雷太,葉介にとって大切な友達となっていきます。

 サマーステイも終わろうとする頃,突然タケじいから「で?なんで帰りたくないんだ?」と聞かれ,夏芽は自分がここに来るきっかけとなった出来事を話します。
 親子とはなんなのか。人とのつながりとはなんなのか。読んでいくうちに思わず涙が出る一冊です。

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