北風のうしろの国 上・下
投稿日:2016年8月30日ジョージ・マクドナルド作 脇明子訳
岩波書店 2015年10月 各760円
馬小屋の2階に住む幼い少年ダイヤモンドのもとに,ある夜,美しい女性の姿をした北風が現れます。北風は,自由に姿を変えることができ,ダイヤモンドは北風に抱かれてロンドンの上空や,荒れ狂う嵐の海へ連れて行かれ,やがて,北風のうしろにある不思議な世界へ行きます。
ダイヤモンドの父親は御者をしていましたが,雇い主の破産により失業し,しばらくして辻(つじ)馬車屋(ばしゃや)を始めますが,新しい暮らしは決して楽なものではありませんでした。
北風のうしろの国から戻ってきたダイヤモンドは,素晴らしい知恵と優しさを備え,貧しい暮らしに苦しむ家族や,横断歩道を掃除して日銭を稼ぐ女の子ナニー,父親の仕事仲間を助け,励ますようになります。
時には「おばかさん」と言われ,変わり者と思われるダイヤモンドですが,物事の本質を見抜く力を持ち,周りの人々に幸せな影響をもたらします。読者もそんなダイヤモンドに魅了され,優しい気持ちを味わうでしょう。
アーサー・ヒューズの挿絵が美しい,19世紀の古典的名作です。