車夫
投稿日:2016年6月24日いとうみく作
小峰書店 2015年11月 1500円
車夫とは,人力車のひき手のことです。17歳の吉瀬走(きつせそう)は、陸上部に所属する普通の男子高校生でしたが、父親の借金が原因で、両親が失踪し、一人きりになってしまいます。生活するため、生きるために陸上部の先輩、前平(まえひら)俊(しゅん)平(ぺい)の紹介で、観光客を乗せて人力車を引く仕事を始めます。そこで、親方や親方の妻琳子(りんこ)さんをはじめ、走を優しく見守ってくれる大人たちに出会います。生活するために車夫を始めた走が、人との出会いを通じて自分の居場所を見つけ、成長していく姿に胸をうたれます。
スカイツリーをあおぎ見る浅草を舞台に、車夫の世界に飛び込んだ走と、そこで出会う人たちとの心の触れ合いをさわやかに描く連作短編集です。
走は初めて人力車に乗ったとき、その気持ち良さから「人力車は他の乗り物とはまるでちがう」と感じます。読み終えた後、人力車に乗ってみたくなる作品です。