月にハミング
投稿日:2016年3月16日『月にハミング』
マイケル・モーパーゴ作 杉田七重訳
小学館 2015年 1600円
イギリスのシリー諸島に暮らす少年アルフィは,父親のジムと海へ漁に行ったときに,無人島で飢え死に寸前の少女を見つけます。
少女は,二人のおかげで助かりますが,瀕死となったショックで記憶喪失になり,声を出せなくなっていました。そこでアルフィ一家は,周囲の反対を押し切り少女を引き取ります。そして,少女の体調は少しずつ良くなっていきました。
しかし,無人島で少女と一緒に発見された毛布にドイツ人の名前が書かれていたことが,島民に知れ渡ってしまいます。当時,第一次世界大戦中で,ドイツはイギリスの敵だったため,少女やアルフィ一家に対する島民の態度は一変します。
ドイツの潜水艦が客船ルシタニア号を沈没させた事件を背景に,逆境下にありながらも,国境や家族という立場を超えたアルフィたちのあたたかい交流が心に残ります。この少女はどこからどのようにして来たのか,謎が明らかになっていく展開に読者はどんどん引き込まれていきます。