なりたて中学生 初級編
投稿日：2015年6月10日
『なりたて中学生 初級編』
ひこ田中著 講談社
2015年 1400円
成田鉄男（なりたてつお）は５年生の夏休み、共働きの両親が一戸建て住宅を購入したため、今まで住んでいたアパートから、瀬谷（せや）小学校の学区に引っ越します。父のすすめもあり転校はせず、今まで通り土矢（どや）小学校にバス通学することになりました。ランドセルを背負ったまま座るバスの座席は座り心地が良く、バス停では、親友が出迎えてくれ、新居の自室も気に入り、人生をリセットしたような気分になるのでした。そんな鉄男でしたが、やがて卒業の時を迎え、小学校の仲間と別れ、知り合いゼロの瀬谷中学校に進学します。
不安だらけで迎えた入学式で、鉄男はこともあろうに小学校時代出会うたびに、にらまれていた隣の南谷（なんや）小学校出身の後藤が同じクラスにいることを知ります。また、制服の採寸時に隣のブースにいて気になっていた、代田杏里（しろたあんり）とも同じクラスでした。鉄男は、後藤や杏里たちと日々を過ごすうちに、中学校になじんでいきますが、それはまた、楽しかった小学校時代との惜別でもありました。
誰もが忘れられない中学校入学という人生の大きな出来事、著者は主人公鉄男に寄り添い、主人公の気持ちを丁寧に描いており、中学生はもとより、昔中学生だった多くの人たちにもおすすめの一冊です。
この作品は三部作の一作目ですが、終始主人公の一人称の大阪弁でテンポよく語られ、また、校名、土矢・瀬谷・南谷（どや せや なんや）主人公の成田鉄男（なりたて）等、随所に遊びがあり楽しめます。挿絵もおはなしにぴったりで、二作目の出版が待ち遠しく思われます。