どろぼうのどろぼん

中学生・高校生向

投稿日:2015年4月29日

『どろぼうのどろぼん』
斉藤倫著 牡丹靖佳画
福音館書店・2014年 1620円

ある雨の日の午後、あじさいの花が咲く庭で、刑事の「ぼく」は、一人の男と出会います。その男は、ぼくの顔をじっと見て、手錠をかけてくださいというようにゆっくりと両手をつき出しました。それが、ぼくと「どろぼうのどろぼん」の出会いでした。
警察署で話を聞くと、どろぼんはいままで千回ほどもどろぼうをしているけれど、一度もつかまったことがない、と言います。どろぼんは、どろぼうの天才だとわかります。今までぬすんだのは、ジューサー・ミキサー、チョコクッキーの缶、ネジなど、持ち主さえ、それがあったことを忘れてしまった「もの」ばかり。どろぼんは、つれ出してほしいという「もの」の声を聞いて、どろぼうをしていたのです。そして、どろぼんにぬすみ出された「もの」は、不思議と必要としている人の手に渡ります。
ある夏の夜、どろぼんは、自分の運命を変えることになる「声」を聞きます。その「声」の持ち主は…。
どろぼんの語る不思議な話にぐいぐい引き込まれ、一気に読み進めることができます。「もの」たちの持ち主への気持ちや、「もの」たちを思うどろぼんの姿は感動的で、刑事やほかの登場人物たちの温かみのある人柄も魅力的です。どろぼんと、どろぼんの運命を変えた「あるもの」との絆には、胸が熱くなることでしょう。

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