ゼバスチアンからの電話
投稿日:2015年2月3日『ゼバスチアンからの電話』
イリーナ・コルシュノフ作 石川素子訳 吉原高志訳
白水社・2014年 2000円
ギムナジウムに通う17歳のザビーネは、ある日3歳年上のボーイフレンドのゼバスチアンとけんかをしてしまいます。
そんな時、ザビーネの父が勝手に田舎に家を買い、一家は引っ越すことに。父にとっては念願の田舎暮らしでしたが、住み慣れた街からしかたなく父についてきた家族は、知り合いもなく不便な暮らしに不満を募らせます。その上、家の借金を抱え、家族はぎくしゃくしてしまいます。
そんなある日、ザビーネの母が叔母からまとまったお金をプレゼントされます。これまでどんな時でも父の意向に従い自分の意見を言わなかった母が、父に逆らって、そのお金で車の免許を取りたいと言い出します。
ゼバスチアンとけんかをしたまま田舎に引っ越したザビーネもまた、いつもゼバスチアンの意向ばかり気にして、彼のためにと、やりたいこともやめてしまった自分に気が付きます。
ザビーネ、母、そして家族一人ひとりが自立していく姿は、読者にも自分自身の人生を歩む力を与えてくれます。30年近く前のドイツを舞台にしたお話ですが、現在の日本の読者が読んでも共感できる作品です。