紙コップのオリオン

中学生・高校生向

投稿日:2013年11月18日

『紙コップのオリオン』
市川朔久子著 講談社 2013年8月
1400円

主人公は、中学2年生の橘論里(たちばなろんり)。新しいクラスにも慣れてきた4月の終わり、学校から帰ると、母親が理解不能な書き置きを残していなくなっていました。母親のブログから、趣味の撮影旅行に行ってしまったことがわかりますが、いつ帰ってくるかはわかりません。論里は、楽天的な父親と自由奔放な妹・有里と生活を送ることになります。
3人での生活にもようやく慣れてきたころ、論里の学校で開校20周年記念の行事をやることになり、ひょんなことから論里は実行委員になってしまいます。最初は上手くまとまらなかった実行委員が、論里が提案したキャンドルナイトに向けて少しずつ団結していきます。
実行委員の活動や家族との関わりのなかで、論里は人と人とのつながりについて、これまで気付かなかった「迷惑かけずに存在できるものなんか、どこにもない」ということを学びます。

論里たちのキャンドルナイトは無事に成功するのでしょうか。母親から論里たちに、おみやげについてメールが届きますが、母親はいつ帰ってくるのか。セミの鳴き声から金木犀の香り、薄い雲のかかった冬の空など、夏から秋、秋から冬へ季節の移ろいが繊細に描かれ、思春期の心情がせつせつと伝わる作品です。

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