愛の一家 あるドイツの冬の物語

児童書(こども)

投稿日:2013年7月17日


『愛の一家 あるドイツの冬の物語』
アグネス・ザッパー作 遠山明子訳 福音館書店 2012年
850円

100年以上も前にドイツで出版され世界中で親しまれてきた作品ですが,少しも古臭さを感じさせない家庭小説の傑作です。
ペフリング一家は,短気だけれど陽気な音楽教師の父親と思慮深く優しい母親,そして個性豊かな七人の子どもたちの大家族です。耳の不自由なお手伝いさんのヴァルブルグとともに,大家さんのハルトヴィッヒ夫妻の家の二階に住んでいます。
にぎやかな一家の暮らしには,さまざまな騒動が持ち上がります。父親が新しく出来る音楽学校の校長として招かれる話が持ち上がり,家族中が期待して決定の知らせを待っていたところ,学校の設立が延期になって一家が失望する話,男の子たちが,しし座流星群を見るために真夜中に家を脱け出し,大家さんに家を追い出されそうになる話,雪合戦をしている最中,ある紳士に雪の玉をぶつけたことから,警察に出頭させられる次男の話,ひどい成績をとった次男のために兄妹が結束して,成績の平均点を父親に報告しようとする話,六番目の男の子が,こづかい稼ぎに荷物運びをする子どもと間違われ,クリスマスツリーをかついで届け先までうろうろする話など子どもたちや両親それぞれが中心になった騒動や事件がユーモラスに語られます。
ストーリーの面白さに加え,両親と子どもたちひとりひとりが個性的に描かれているのも,この作品の魅力です。責任感の強い長男,陽気な次男,優等生だけれど格好つけてしまう三男,双子の姉妹,音楽に熱中してしょっちゅう騒ぎを起こす四男,そして末っ子の女の子。子どもたちが信頼している父親と母親も完璧ではなく人間味あふれる人物として描かれています。
家族が助け合い協力し合って暮らすひと冬の物語は,暑い夏にさわやかな風を運んでくれます。ぜひ夏休みに読んでみてはいかがでしょうか。
図書館おすすめの1冊。高学年向き。

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