パンとバラ―ローザとジェイクの物語
投稿日:2012年11月22日『パンとバラ―ローザとジェイクの物語』
キャサリン・パターソン作 岡本浜江訳 偕成社
2012年9月
1600円
1912年のアメリカ東部ローレンスの町で実際にあったストライキを題材にしたお話です。
マサチューセッツ州のローレンスにある工場で働くイタリア人の労働者たちは,大変つらい労働条件のなか,わずかな賃金だけで家族を養う暮らしを強いられていました。主人公のローザの母や姉も工場で働いていましたが,少しでも労働条件がよくなるようにと,ストライキに加わります。学校でストライキはよくない,とフィンチ先生に教えられローザは,心配と不安の日々を送ります。
一方,学校にも通わずに働く貧しい少年のジェイクは,飲んだくれの父親からの暴力を恐れ,町のゴミ山で寝泊まりをする日々を送っていました。そんなある日,ローザとジェイクは出会い,ローザは母親に内緒で一晩だけジェイクを自分の家に泊めます。
次第にストライキは激しくなり,工場の周辺に住む子どもたちは,他の地域へ疎開することになります。ローザはヴァーモントに行くことになります。そして,ローザの弟と偽りジェイクもヴァーモントに向かいます。長い列車の旅の後で到着した二人を待っていたのは,年をとったジェルバーティ夫婦でした。そこは,ローレンスの厳しい環境とは正反対の,豊かで思いやりにあふれた生活でした。家族のあたたかさが伝わる作品です。