お父さん,牛になる

児童書(こども)

投稿日:2012年7月11日

『お父さん,牛になる』
晴居彗星作 ささめやゆき画 福音館書店 1300円
2012年

食事をした後に,すぐに横になると「牛になるよ」と言われたことがありませんか。牛になる?そんなことはありえませんよね。しかし,今回紹介する本は現実にお父さんが牛になってしまうというお話です。
主人公の悠(ゆう)一(いち)は,お姉ちゃんと両親と四人暮らし。昨夜はごきげんにすきやきを食べたお父さんが,月曜日の朝,目覚めてみると牛になっています。立派なツノを生やした,白黒まだらの大きい牛。家族はただただ茫然(ぼうぜん)とするばかり。牛になったお父さんは,放っておけば一日中牛専用のエサを食べつくします。食べるのはいいのですが,大変なのは食べたあとの後始末。バケツ一杯にたまったフンをトイレに流しますが,その臭いはすさまじく鼻がねじ曲がって気絶しそうになります。お父さんの会社からはいろいろたずねてくるし,近所のお節介なおばさんたちは首を突っ込んでくるし,どうなってしまうのでしょう?
お父さんが牛になるという異常事態が日常になるにつれ,家族にとって「父」とは「夫」とはということをそれぞれが考えるようになっていく様子や,後半に登場する山梨に住むおばあちゃんの存在が,ごく自然に描かれ魅力的です。このダイナミックでユーモアにあふれた作品を,ささめやゆき氏の挿絵がさらに盛り上げています。

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