高野聖

一般書

投稿日:2012年2月10日

泉 鏡花 著
2011年 1円より

物語は越前敦賀の宿屋で同宿の僧(六明寺(りくみんじ)の宗朝(そうちょう)という大和尚)から修行時の話を聞くという設定で始まる。
修行僧は飛騨の山中で蛇や山蛭などに悩まされつつ、ようやっと一軒の山家に辿り着く。
そこには白痴の男と「小造りの美しい、声も清しい、ものやさしい」婦人が居り、一夜の宿を乞うと「都の話をしないこと」を条件に泊めてくれる。
婦人は谷川に僧を案内し、その全身を女体で包み込むように洗ってくれる。僧は恍惚としながらも婦人の周りには、怪しの姿が取り巻いているのを感じる。
深夜、魑魅魍魎の跋扈(ばっこ)するなか、陀羅尼を唱えて一夜を過ごし、翌朝、出立する。
しかし後ろ髪ひかれる思いで、何もかも捨てて戻ろうとしたとき、背中を叩かれる。それは婦人が「おじさん」と呼んでいた親仁で、僧の心を見透かした親仁は、婦人の正体を語り、
女の手が触れ、あの水を振る舞われて、今迄人間だったものは居ない、お前様は志が堅固だったから助かったのだ、「妄念を起こさずきっと修行せよ!」と僧の背中を叩いた。
魂を取り戻した僧は修行を続ける。
「如意自在の魔神」とされる女性を、鏡花はいかに上品に描くか苦心したという。
幼くして母親と死別した鏡花は、母性思慕の思いが強く、この婦人も僧には母性的であり「桃の花」のような存在である。
しかし邪心を持った男には酷薄で、蟇、蝙蝠、牛、馬、猿にとその姿を変えてしまう。女性本来の持つ二面性も描かれている。

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