風音

一般書

投稿日:2010年3月10日

目取真 俊(めどるま しゅん) 作
リトルモア 2004 1365円

この作品は第二次世界大戦末期の沖縄戦にはじまり、祖父・父・子の三代にわたる戦中戦後の激動の沖縄が背後にある。
泣き御頭(うんかみ)は崖の上の風葬場に白い砂の半ば埋もれた遺体の頭蓋骨から高く低く響く。その音は海を渡ってきた風が眼窩を吹きぬける際に頭骨の空洞に反響して起こるのだと云われる。
風音が鳴り出すと、聞く者は御尊(うーとうと)御尊とつぶやき、風音が暗い崖下の細い径にさまよい響いてくると胸の底までしみこみ畏敬の念にとらわれる。沖縄の地形、福木・マングローブなどの植物、蟹、大コウモリなどのいきもの、自然をからませてその時の登場人物の心の問題を掘り下げて描いている。
自分の老いと、四十年近くごまかした記憶と、死ぬまで向かい合わねばならない清吉、また報道関係者藤井の生き残った特攻隊員としての、苦しみの中から生きる道に辿る心のあり方が緻密に丁寧に書かれている。忘れられない作品である。
宮の下読書会   中川輝江
読書会おすすめの一冊。
紹介:アカデミー愛とぴあ

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