非色

一般書

投稿日:2008年11月10日

有吉佐和子 作
角川書店 1993年 544円

戦争花嫁の物語である。
どこにでもいそうな平凡な娘笑子は、空爆で焼け野原となった東京に母と妹と暮らしていた。敗戦後の東京にまともな仕事はない。笑子はやっと進駐軍の黒人専用キャバレーのクロークの職を得る。支配人ジャクソン伍長に見初められ、感覚的には拒否しながら結婚する。そしてジャクソンそっくりの女児を産む。周囲の好奇の眼の中、笑子は、すでに帰国し除隊している夫のもとへと渡米する。
ジャクソンはニューヨークのハーレムに暮らしていた。自分一人が食べるだけで精一杯だった。日本では常に「自由と平等」を口にしていた人間とは別人のようであった。笑子は、働きながら次々に子供を産むなかで、考えるようになる。差別は何によって起きるのか。それは肌の色や貧富の差によるものではない。差別とは、人が自尊心を保つために他者を低く卑しめて見ることによって存在するものでないだろうか、と。
主人公の笑子を通して、日本中が飢えていた占領下の日本をありありと思い出す。戦争を知らない世代の者は、国が敗れるということはどういうことかを考えるであろう。私は笑子といっしょに差別を考えるとともに、彼女の明るさやたくましさに元気づけられたのである。
染地読書会   大畑月子
読書会おすすめの一冊。
紹介:アカデミー愛とぴあ

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