祖国とは国語

一般書

投稿日:2010年4月10日

藤原 正彦 作
新潮社 2005 420円

この本には、主に2000年から三年ほどに書かれたエッセイが集められている。
その中の「国語教育絶対論」という題のものが本書の中心的テーマで、そこでは① 日本再生の急所、② 国語はすべての知的活動の基礎である、③ 国語は論理的思考を育てる、④ 国語は情緒を培う、⑤ 祖国とは国語である、⑥ これからの国語、となっていて、特に⑤に著者の考えが熱っぽく述べられている。
先ず、祖国とは血ではないと言う。どの民族も混じり合っていて、純粋な血など存在しないと言う。また祖国とは国土でもないと述べる。世界は有史以来戦争の度に占領したりされたりしてきた。祖国とはまさに国語であって、国語の中に祖国を祖国たらしめる文化・伝統・情緒などの大部分が包含されているのである。国語は情報伝達の手段に留まるものでなく、先に挙げた② ③ ④ の力となるものだから、我が国でも小中学生に国語の授業時間数を多くする必要があると論述されている。
最後のエッセイが「満州再訪記」である。藤原氏の生地である旧満州の新京(現長春)を、母「藤原てい」さん、奥さん、三人の息子さんとで訪れた際の紀行文で、ユーモアや叙情が滲む文章である。また十九世紀以来の各国の植民地争奪、日本と満州との関わり、終戦直前のソ連軍の侵攻等の世界史が詳しく語られ、満州の中央観象台に勤務中だった氏の父「新田次郎」氏の御家族の受けた終戦時の苦難が書かれている。
宮の下読書会   大塩直子
読書会おすすめの一冊。
紹介:アカデミー愛とぴあ

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