李陵

一般書

投稿日:2007年2月23日


中島 敦 著

舞台は古代中国、前漢の光武帝(140BC~87BC)の時代匈奴に囚われた二人の武官(李陵と蘇武)都の文官(司馬遷)の物語。
◆李陵は五千の兵で匈奴の領地深く攻め込んだが刀折れ矢もつき捕虜になる。彼が胡地に生きているのを知った武帝は妻や子ら一族を抹殺。こうなったのは仕方ない事としても、「自分が故国に尽くした事と故国が己に報いたこと」を考え礼を尽くして迎えてくれた単于([ゼンウ]匈奴の王)に仕える。
「胡地の風俗は野卑でも不合理でもない、漢人の生活だけが美しいのではない、土地には土地の風習があり、それぞれに美しいのだ」と胡地の良さも見出し匈奴の女を妻として一子を設ける。武帝が亡くなり故国からの迎えも断り胡地に没。
◆蘇武は平和使節として匈奴に捕虜交換に行ったが不測の事故で全員拘束され降伏に応じなかった為北辺に放逐された。{飢餓・寒苦・孤独}の中「祖国の冷淡さも己の節義を改めなければならない程のやむを得ない事情ではない。自ら顧みて最後迄運命を笑殺し得たことに満足している」十九年ぶりに迎えられ故国に帰る。
◆司馬遷は李陵の降伏を貶める武帝の側近を嫌い、彼を誉めて武帝の怒りをかい、宮刑に処せられた後も編集中の(史記)一三〇巻を完成、六〇歳で没。
緑ヶ丘読書会 西宮 啓

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