日はまた昇る

一般書

投稿日:2009年10月10日

E・ヘミングウェイ 作
新潮社 2003 660円

作者の出世作。パリとスペインを舞台に、女を愛せない体になった男と彼を愛する女の、哀切ともいえる物語が大げさな感情表現を一切排したリズミカルな文体で描かれます。
当会の共通認識の一つに、小説の主人公は魅力的であるべきだ、というのがあります。本書の女主人公ブレットはとても素敵だし、その刹那的な享楽の日々のなかから滲み出る悲しみに共感したものです。
ヘミングウェイといえば「男」。この作品でも主人公のジェイクをはじめ、その周囲に登場する男たちひとりひとり個性が際立っています。その上で、男同士の友情というか、魂のぶつかり合いというか、そのあたりヘミングウェイの独壇場といえるでしょう。
作品のキーワードは「時代」です。第一次大戦後の、帰る場所もエネルギーを向ける場所も失ってさまよう、ロスト・ジェネレーションと呼ばれる若者が存在した時代。
この作品を私たちが読んだのは、たしかバブルの時代でしたが、今、読んだとしたら、閉塞感ただよう社会状況のなか出口を求めてもがく若者を思いうかべるのかもしれません。
ちなみに個人的なことですが、はるか昔、学生だった私にアブサンという強いお酒を教えてくれた作品でもあります。
名作読書会 海本みどり
読書会おすすめの一冊。
紹介:アカデミー愛とぴあ

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