エンザロ村のかまど
投稿日:2009年10月25日アフリカの国ケニアの首都のナイロビから車で半日の距離にある「エンザロ村」には,電気も水道もガスもありません。でも,著者が泊めてもらった家の奥さんは,食事の時間になると手早くテーブルの上に,スープやあげパンや炒り卵などの様々なご馳走を並べてくれました。これは,いったいどうしてなのでしょうか。
その秘密は「エンザロ・ジコ」と呼ばれるかまどにありました。「エンザロ・ジコ」を考え出したのは,岸田袈裟(けさ)さんという日本人の女性で,岸田さんは30年近くケニアの地で,女性や子どもの生活を改善するために働いてきました。
岸田さんは,ケニアの人たちが本当に必要としているのは何か,自分たちでお金をかけずにつくれるものはないかを村人たちとの話し合いを通して考え,セメントで作った箱に小石や砂を入れて水をこす装置を作りました。そうして「さらに安全な水を」と考えて出てきたアイディアがかまどだったのです。1度に3つの鍋を並べてかけることができ,食事の支度の時間が短縮できただけではなく,沸かした水を飲めるようになり赤ちゃんの死亡率が減ったのです。岸田さんは,今でも「エンザロ・ジコ」の講習会を開き,普及に努めています。
さて,岩手県遠野市出身の岸田さんがケニアの地で広めたものは,もう一つあるのです。それは,「わらぞうりづくり」です。ケニアでは,はだしの人が沢山います。はだしは,気持ちがいいし,足の裏を丈夫にするという利点もあるのですが,足の裏の傷から菌や寄生虫が入ってしまうことがあります。岸田さんは,「わらぞうりづくり」を初め助産婦さんに教えたのですが,それが小学生の間に広まり,けがで学校を休む子どもが減ったということです。
私たちの国日本では,お金を出せば何でも手に入ります。でも,日本が手放してしまった「お金をかけずに豊かな暮らしを営んでいく幸せ」を,この本は私たちに教えてくれます。
児童書おすすめの1冊。 高学年から
紹介:調布市立図書館 児童担当