きけわだつみのこえ

一般書

投稿日:2009年11月10日

日本戦没学生記念会 編
岩波書店 1995 903円

「戦争というものは、いかなる戦争でも人間を追いつめるものである。相手に銃を突きつければ、相手もこちらに銃を向ける。これは追いつめられた状態の、最も単純な例である」と、最初のページで渡辺氏は語っている。以下は戦没者の遺稿の中より少し抜粋してみた。
①「空中勤務者(特攻隊)としての私は毎日が死を前提としての生活でした。私は自由主義に憧れていました」
②「俺の子供はもう軍人にはしない、軍人だけは」
③「叱られて土掘る兵は愛(いと)しけれ、世にある時の姿思えば」
④「汽車が通っていく。闇のなかにひとつらなりの記憶のような灯をともして。私の切られた髪がながれてゆくよ。髪よ、ふるさとよ、異郷の匂いよ──私は髪が生やしたい。夢にさえも」
⑤「人間の中心とは何だろう、事実とは真実のことではない」
⑥「蒼く澄みて鷗の遊ぶこの波の底、黝(あおぐろ)き死の光あり」。
私は息をつめて読み終わった。人間は何で争い殺し合うのだろうか。この本の中のひとりひとりは、みんな自由と平和を願っているのに。
戦後六十一年、平和な時こそ、そして戦争を知らない世代の人々こそ、手にとって読んで欲しいと願う一冊である。
このような悲惨な戦いの無いことを祈りながら。
緑ヶ丘読書会 野口貞子
読書会おすすめの一冊。
紹介:アカデミー愛とぴあ

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