『PAY DAY!!!』

一般書

投稿日:2011年3月9日

山田詠美著
新潮社 2003年 1500円

アフリカ系アメリカンの双子兄妹が、幼い時に別れていた母を9・11で失う。その時の恐怖と苦悩を乗り越えて成長してゆく彼等の姿が長編にいきいきと書き上げられている。
彼等は白人と黒人、男と女、南部とニューヨークなど、いくつかの条件を抱えながら、力強く問題を解決し、アメリカ社会の抱える矛盾の一隅で、貧しくとも心暖かい家族愛に支えられつつ、幸せな人生を織りなして行く。そして、亡き母を冷静に見直して、父と比べながら、母に対する永い間の誤解を、尊敬にかえてゆくところが、いとおしい。
山田詠美にとって、人と人との結びつきこそ重要であり、即ち、そのことは男女の係わり合いをも意味する。お互いに「個」の尊厳を認め、自己の人生を、自由に築いてゆく努力が、得意の、現代アメリカ社会の日常を舞台にして、生き生きと綴られている。
「ささやかながら、今日は PAY DAY よ、嘆いたりしないで、明日に希望を繋いで生きましょう」と語る、明るさがすくいである。
互葉読書会 水越康子
読書会おすすめの一冊。
紹介:アカデミー愛とぴあ

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