『子どもに語るイギリスの昔話』

児童書(こども)

投稿日:2010年12月25日

松岡享子編・訳
こぐま社 2010年 1600円

若い学生と接する機会があり,「みなさんは昔話といえば,どんな昔話が頭に浮かびますか?」と聞いたところ,「ももたろう」「いっすんぼうし」「こぶとり」と,答えてくれたのはほんのいくつかだけ。
昔話をきいたことがないのだろうか?また不思議に思ったのは,どれも日本の昔話ばかりで,外国の昔話がひとつも出てこなかったことです。せめて,イギリスの昔話の「三びきのクマの話」「三びきの子ブタ」「ジャックとマメの木」などをあげてほしかった。生活様式,服装などは洋風化されている若者たちなのに,精神,心の中などは日本的なものに,どっぷりと浸かっていることがわかり,少し驚きを感じました。
今から120年前,民間伝承の研究者として,昔話の収集や研究に携わっていたジョセフ・ジェイコブという人が,1冊のイギリスの昔話集を出版しました。この本は好評で,数年後に第2集が出て全部で87の話が収められています。その中から16篇を厳選して収録したのが本書です。
運をさがしに出かけたジャックが,ネコ,犬,ヤギと,次々に出会って仲間を増やし,全員の活躍で泥棒をやっつけ幸運を手にする「ジャックの運さがし」,若くて,美しくて,お金持ちで,おまけに,右の腕が金でできている女の人と結婚した男が,妻の死後,妻の金の腕を手に入れようする「金の腕」など,大男や幽霊が登場する怖いお話,おろかでも憎めない人々の物語です。
本書を編集し訳された松岡享子氏は『くまのパディントン』シリーズ,『しろいうさぎとくろいうさぎ』(いずれも福音館書店発行)の訳者,『なぞなぞのすきな女の子』(学習研究社)の作者,児童文学の研究などで著名な方です。また,スト-リーテラーとしても日本における先駆者です。その松岡氏が携わった本なので,読み聞かせはもちろんのこと,語りのテキストとしても最適です。どうぞ,目で読むだけではなく,声に出して読んでみてはいかかでしょうか。
今回紹介した本以外にも,シリーズとして,グリム,日本,アイルランド,トルコ,北欧,イタリア,モンゴル,ロシア,中国,などがありますので,お話で世界一周を楽しむことができます。
児童書おすすめの一冊。小学校中学年以上向き
紹介:調布市立図書館 児童担当

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