『モーツァルトはおことわり』
投稿日:2011年4月10日「モーツァルトの件についての質問だけはしない約束よ。」
これが,先輩に代わって世界一有名なバイオリニスト,パオロ・レヴィにインタビューすることになった新米記者レスリーが言い渡されたことでした。しかし,その理由がわからないままインタビュー当日を迎えたレスリーは,緊張と不安のあまり,モーツァルトの質問はだめだと言われたことを,レヴィ氏本人に伝えてしまいます。その上,許可されたたった一つの質問で,彼がバイオリンを弾き始めたきっかけを尋ねてしまいました。プライベートな質問もしないようにと,先輩から注意されていたというのに…。
これでは「出て行け!」と怒鳴られてもしかたないと,レスリーは覚悟しました。しかし,レヴィ氏はしばらく黙った後に,勇気をふりしぼるようにして,ある一つの物語を語り始めます。その物語は,かつてナチスの強制収容所で起きた悲惨な出来事の記憶と繋がっていたのです。
第二次世界大戦中,何百万人というユダヤ人が強制収容所で命を落としました。また,奇跡的に助かった人々の心にも,深い傷跡が残りました。彼らはその後の人生をどのような気持ちで,何を考え生きたのか。この物語は,そんな想像から生まれたものだと著者は語っています。
青を基調とする優しい色彩の絵がそえられた,イタリアのヴェニスを舞台に語られる物語。人と音楽の持つ力が強く伝わってくる1冊です。
児童書おすすめの1冊。小学校高学年から
紹介:調布市立図書館 児童担当