石の神

中学生・高校生向

投稿日:2014年9月16日

『石の神』
田中彩子作 一色画 福音館書店
2014年4月 1500円

江戸時代、捨吉(すてきち)と寛次郎(かんじろう)は石工見習いとして大江屋という石屋で出会います。捨吉は、赤ん坊のころに母に捨てられ、村の番をする男たちが暮らす「荒れ地」と呼ばれる村外れの荒れた土地で権平爺(ごんぺいじい)に育てられました。捨吉の将来を心配した権平爺は、捨吉を「荒れ地」から出すことにしますが、捨吉は逃げ出します。行くあても食べるものもなく捨吉が行き倒れているところを石工に助けられ、そのまま大江屋に引き取られることになります。無愛想で自分の名前すら話さなかった捨吉は、申年(さるどし)にやってきたことから「申吉(さるきち)」と呼ばれるようになります。
一方、寛次郎は百姓の次男坊として生まれ、羽振りのいい石工に憧れていました。十歳になった春に、父親に連れられて大江屋に弟子入りしました。寛次郎が弟子入りして三年たったある日、捨吉が大江屋にやってきて,親方から面倒をみるように言われます。
寛次郎は、兄弟子である自分や他の石工に対しても変わらず無愛想な捨吉に戸惑い、捨吉の石工としての才能を感じながらも、そのことを素直に認めることができないままでいました。二人が石を彫ることにようやく慣れてきたころ、兄弟子の提案で二人は腕くらべをすることになります。勝負のお題は、地蔵。捨吉と寛次郎は、夜も眠らず地蔵を彫っていきますが…。
物語は寛次郎と捨吉、それぞれの視点から心情を描き、二人の彫る石の感触まで伝わってきます。事情は違うものの、石屋に弟子入りした二人の少ちょう年の成長物語です。

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