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児童書(こども)一覧

「ハコの牧場」


北村恵理 著 金井田英津子え 福音館書店 2006


まだ戦争の影を引きずる1950年代、北海道石狩平野。沼のほとりの牧場に暮らす小学2年生春子(ハコ)は、好奇心旺盛でいつも牧場を駆けまわり元気いっぱい。でもなぜか、思わぬ事件を引き起こしてしまう。
洪水や冷害で牧場を経営している大人たちには厳しい毎日だが、ハコの(自然の中での)遊びの世界や家族たちのふれあいは常に豊かである。

絵本『こぐまのたろ』の著者北村恵理さんの子ども時代の思い出を2年間に凝縮した物語。
人が自然と折り合いをつけながら暮らす様子。そして、自然の中で暮らすことの喜びが感じられる作品。

児童書おすすめの一冊。高学年向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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天山(てんざん)の巫女(みこ)ソニン 一黄金の燕


菅野雪虫 著 講談社 2006 1400円


生後まもなく,巫女(みこ)に見こまれ天山(てんざん)につれていかれたソニン。
しかし12年間の修行の後,巫女としての素質がないと里に帰されてしまう。
家族との温かい生活に戻ったのもつかのま,今度は思いがけない役割を担ってお城に召されることとなった。
しかしソニンはそこで大きな陰謀(いんぼう)に巻き込まれていく・・・。

朝鮮半島の古代を連想させる時代背景,王が国を統治し,巫女の力があがめられる世界でくりひろげられる12歳の落ちこぼれ巫女ソニンの物語。

天山で育ったソニンの感性は独特であり,明るく前向きな姿はつい応援したくなる。
脇を固める登場人物も魅力的。
さらに登場人物に負けないストーリー展開,これらが重なり読む人の心をひきつける。

児童書おすすめの一冊。中学生向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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愛をみつけたうさぎ-エドワード・テュレインの奇跡の旅-


ケイト・ディカミロ作 バグラム・イバトーリーン絵 子安亜弥訳  ポプラ社 2006 1400円

持ち主の女の子に愛されていても,自分は愛することを知らない陶器のうさぎエドワード。
ある時,女の子と共に船旅に出たエドワードは船から落ち,女の子とはぐれてしまう。
その後,エドワードは年老いた漁師夫婦や飼い犬と旅を続ける渡り者の男,病気で寝たきりの少女など様々な人のもとを転々とすることになるが…。

愛情を感じ始めたところに,突如としてやってくるつらい別れ。出会いと別れの繰り返しを通して,徐々に変化していくエドワードの心の動きが丁寧に描かれた作品。
最後には心温まる出会いと結末が待っている。


児童書おすすめの一冊。高学年向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当


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百まいのドレス


エレナー・エスティス作 石井桃子訳 ルイス・スロボドキン絵

「あたし、うちに、ドレス百まい、持ってるの。」

ポーランドからの移民で、いつも同じはげちょろけの青いワンピースを着ているワンダが言ったことから、ワンダをからかう遊びが始まった。
マデラインは、人気者で活発な親友のペギーが先頭に立ってするこの遊びが内心嫌でたまらないが、ペギーにもうやめようと言う勇気もなく思い悩む。
ワンダは、デザイン・コンクールに美しい百枚のドレスの絵を残して学校を去っていった。
 ワンダをめぐる、マデラインの心の動きを鮮やかに描いた作品。
マデラインの苦しみとともに、百枚のドレスの絵が読む者に様々な想像を呼び起こし、忘れがたい。
「百まいのきもの」という題名で親しまれてきた絵本が同じ訳者によって50年ぶりに改訳され、挿絵も色鮮やかになって、絵物語の形で出版されたもの。


児童書おすすめの一冊。小学校中学年以上向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当


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ぼくはマサイ ―ライオンの大地で育つ―


ジョゼフ・レマソライ・レクトン著 さくまゆみこ訳 さ・え・ら書房 2006年2月刊 1500円

著者は遊牧民の子どもとしてケニアの北東部に生まれる。父と2人の母,3人の兄の家族とともにアフリカの草原で牛を飼い,マサイ族の伝統と文化を大切にした暮らしをしていた。体に布をまとい手には槍を持ち,牛のために良い草や水を求めて一日に数十キロも歩き,時にはライオンに襲われることもある暮らしは原始的にも思えるが「いちばん公平ですばらしいシステムをもった社会だと思っている」と著者は言う。村ではみんなが助け合い,子どもも大人も役割に応じて働き,年長者を敬い,誰も飢えることがなく,みんなが平等な社会なのだ。

著者は6歳のとき,一家族から一人が学校に行くというケニア政府の方針で,西洋風の教育をする学校に行き始める。マサイの伝統文化を基盤に持ちながら,西洋文化をバランスよく取り入れる賢明さ,旺盛な好奇心や人一倍の努力によりハイスクールに進学,やがて十代後半でアメリカの大学に進むことになる。現在は一年の半分はアメリカで教鞭を執り,のこりの半分はケニアで社会貢献活動を精力的に行っているという。

著者の人間的な魅力にあふれた半生が,マサイの興味深いエピソードとともに語られ,生きることの素晴らしさを感じさせてくれる1冊である。

対象は小学校高学年以上。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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マイケルとスーザンは一年生


ドロシー・マリノさく まさきるりこやく アリス館 2006

町に住むマイケルと農場に住むスーザンは、もうすぐ6歳の誕生日を迎える。ふたりは初めは知らない者同士だったが、同じ日に隣の家で誕生日パーティーを開いたことから友だちになる。偶然出会ったふたりは、今度新一年生となり、同じ学校へ行くことがわかる。
初登校のハラハラドキドキ、スーザンの農場への遠足など、学校での出来事が作者の温かいまなざしで語られる。
子どもの心の動きが見事に描かれ、ふたりを取り囲む温かい家族も魅力的。古き良き時代のアメリカの家族生活を、細やかな筆致で描いたおはなし。

児童書おすすめの一冊。低学年向き。


紹介:調布市立図書館 児童担当

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ふしぎなロシア人形バーバ

ルース・エインズワーク作 ジョーン・ヒクソン画 多賀京子訳 福音館書店 2007

おはなしの舞台は人形たちの住むバラやしき。かべは白く、屋根が赤い四角い家です。
バラやしきは店で売れなかったおもちゃや、家の中でどこかにいってしまったおもちゃたちが行くしあわせの国にあります。
バラやしきにはピアノの名人フレデリックとフランス人形のルル。いたずら好きの男の子のウィリーと、バラやしきの家事をするマーサが暮らしていました。
そこにマーサの姪でおてんばな女の子ベラと、住むところが見つからないロシア人形のバーバがやってきました。住人が6人になったバラやしきはますます賑やかになり、楽しい毎日を送っていたのですが、どうもバーバの様子がおかしいのです。
実はバーバにはあっと驚く秘密が隠されていたのです。
ストーリーに躍動感がありぐいぐい引っ張っていく。それぞれの個性が輝く人形たちの日常が生き生きと描かれた楽しい作品。

児童書おすすめの一冊。小学校中学年以上向き。


紹介:調布市立図書館 児童担当

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棚田を歩けば


青柳健二文・写真 福音館書店 2007 1900円
山の斜面や谷間に、階段状に作られた田んぼのことを棚田といいます。人間が生きていくために、自然から許されるような範囲で必要最低限の手を加えて作られた棚田は、それぞれ土地の形によって、形もいろいろ。棚田は、自然と人間が一緒になって作り上げた美しい“芸術作品”です。

この本は、日本を中心に世界中の棚田をめぐっている著者による棚田の写真集です。

棚田では米が作られています。農家の人々と米作りの1年間、棚田で出会える生き物を、美しい写真と簡潔な文章で紹介しています。
日本のみならず、中国やベトナム、イランなど、世界の棚田の写真も見ることができます。

児童書おすすめの一冊。小学校中学年向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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サリーおばさんとの一週間


ポリー・ホーヴァス作 北篠文緒訳 偕成社店 2007 1470円


 「両親が一週間の海外旅行に出ようとしていた矢先,留守中の三人の子どもの面倒をみてくれるはずだったベビーシッターが病気になってしまいます。代わりの人はみつからず,頼りとするライラ伯母さんもあいにく旅行中です。
 子どもたちのパパにはもうひとりサリーというカナダに住むお姉さんがいますが,サリーに頼むのは問題外だとパパは言います。でも最後にはママがパパを説得し,サリーおばさんに来てもらうことになって,子どもたちは初対面のサリーおばさんと一週間のお留守番をします。外見も言動も型破りのサリーおばさんは,毎晩子どもたちにおもしろい話をしてくれて,こどもたちはおばさんが大好きになります。」
                          (訳者あとがきより)

 サリーおばさんの語るお話は,おばさんの子ども時代の体験で,大家族のなかで起こったわくわくするようなエピソードからぞっとするような隣人の話,トロルや魔女が登場する怖い話など本当か嘘かわからないようなお話ばかりですが、子どもたちはすっかり引き込まれてしまいます。そして最後の夜におばさんが語ったのは,おばさんの弟である子どもたちのパパとの苦い思い出でした……。

 風変わりなおばさんのユーモラスな語り口に引き込まれながら,結末で明かされる子どもの嫉妬心がまねいた悲しいできごとと,それを子どもたちへのメッセージとする明るい展望にさわやかな感動をおぼえます。単純なハッピーエンドではありませんが,子どもたちの力でサリーおばさんとパパとの関係が修復しそうな今後が期待できる結末です。

児童書おすすめの一冊。小学校高学年から中学生向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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まちのコウモリ


中川雄三写真・文 ポプラ社 2007 1200円


 夕暮れのあかね空をひらりひらりと飛んでいるアブラコウモリ。
傘みたいな翼、柔らかな毛におおわれた体、とがった歯を持つコウモリは、空を自由に飛びまわれる唯一のけものです。

高層ビルがたちならぶ大都会や多くの人が行きかうネオンの街にも、コウモリは住んでいます。ビルや橋げた、学校の校舎など、建物の狭いすき間がコウモリの住みか。昼間は眠って過ごしますが、日が沈むと、たたんでいた翼を大きく広げて、建物のすき間のねぐらから夜の空へと飛び出します。そして大好物の蚊や羽虫などを捕らえて食べるのです。

意外に私たちの身近にいるコウモリの暮らしをページいっぱいの写真で紹介した知識の絵本です。

児童書おすすめの一冊。小学校低学年向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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帰ってきた船乗り人形


ルーマー・ゴッデン作 おびかゆうこ訳 たかおゆうこ絵

徳間書店 2007年 1600円


この物語は、人間の生活と人形の生活がクロスーオーバーして描かれるユニークな舞台の中で進んでいきます。

シャーンは英国のウェールズの海辺の町に住む8歳の女の子。シャーンの持つ「人形の家」には、お母さん・お姉さん・双子の女の子の人形はいますが、お父さんやお兄さんの人形はいません。2人は行方不明になってしまったのです。

この家に新しくやってきた船乗り人形のカーリーは、お父さんやお兄さんが行方不明になったという話を聞き、海を渡って探しにいきたいと考えていました。しかし、そんな願いも人形の身ではどうすることもできません。

そんなある日のこと、カーリーは窓の外に落ちてしまいます。カーリーを助けてくれたのは、この町の船乗り学校に通うフランス人の少年ベルトランでした。ベルトランは、カーリーを拾いあげ胸のポケットにしまい、海へ訓練に出て行きます。カーリーもまた念願がかない大海原へ出発しました。カーリーはお父さんやお兄さんを探し出し、人形の家に戻ることができるのでしょうか。

思わず笑顔がこぼれる素敵な結末が待っています。

児童書おすすめの一冊。小学校高学年向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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トメック-さかさま川の水 1-


ジャン=クロード・ムルルヴァ作 堀内紅子訳 平澤朋子画

福音館書店 2007年 1700円


 代々続く村のよろずやを一人で切り盛りしていたトメックは,ある日お店でさかさまに流れる川を探して旅をしているという少女ハンナに出会います。ハンナに一目ぼれしたトメックは、彼女を追って、その川を探す旅に出ることにしました。トメックはハンナと再会し,無事さかさま川にたどり着くことができるのでしょうか。

 「ワスレの森」,眠りを誘う花畑,香水作りの村,「どこにもない島」など,トメックの行く手には不思議な場所とたくさんの出会いが待ち受けています。

 「さかさま川の水」シリーズは,トメックの視点で語られる『トメック』とハンナの視点で語られる『ハンナ』の二部作で,それぞれの冒険が縦糸と横糸になって、ひとつの物語が作り上げられています。登場人物や舞台設定が興味深く,お話の世界にぐいぐい引き込まれます。二冊合わせてお楽しみください。

児童書おすすめの一冊。小学校高学年向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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ポータブル・ゴースト


マーガレット・マーヒー作 幾島幸子訳

岩波書店 2007年6月 1800円

 タイトルを直訳すると「持ち運びできる幽霊」。おかしな書名に興味を持って読み始めると,その軽妙な語り口の奇想天外なストーリーに思わず引き込まれてしまいます。

 主人公の少女ディッタは,学校の図書室のすみにいる不思議な少年が気になってしかたありません。思い切って声をかけてみると,少年は図書室から離れられない幽霊だとわかります。また一方で,ディッタの友人のマックスの様子がおかしくなり,その理由をたどっていくと,マックスの新築した家に住みついた恐ろしい幽霊の存在が明らかになります。

 ディッタは,マックスを幽霊から救い出すため,パソコンおたくの妹や変わり者の老人,さらに図書室の少年幽霊にも助けられて,恐怖に立ち向かっていきます。

 ハラハラドキドキのストーリーの中に,幽霊も含めた個性的な登場人物が生き生きとかかわり合い,それぞれが成長していきます。パソコンが有効な小道具として使われ,予想外の結末へと導いていくあたりもいかにも現代的で,読者に親しまれそうです。

 作者は1936年生まれのニュージーランドの児童文学作家。絵本から読み物まで多数の作品があり,2006年度国際アンデルセン賞・作家賞を受賞するなど国際的にも高い評価を受けています。

児童書おすすめの一冊。小学校高学年向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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たたみの部屋の写真展


朝比奈蓉子作

偕成社 2007年 1200円

 空き家を見つけたタモツとユウイチは、その庭に勝手にカメの池を掘って自分たちの隠れ家にしていました。すると突然、家主のおばあさんとその娘のなつみさんが帰ってきます。おばあさんはタモツを見ると「とおる」と呼びかけます。実はおばあさんは認知症で、とおるは亡くなったおばあさんの息子でした。

夏休みの間、タモツはとおるとしてこの家に通うことになります。おばあさんやなつみさんとの係わりのなかで、とまどいつつも老いや家族について考え、タモツは一回り成長します。

認知症を日常の生活のなかで気負いなく捉え、好感が持てる作品です。主人公の中学生やおばあさんを取り巻く人々の心の交流が温かく爽やかに描かれています。

児童書おすすめの一冊。小学校高学年以上向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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グスコーブドリの伝記


宮沢賢治 作

くもん出版 1993年


  この物語は、飢饉で両親を失い、妹とも生き別れになった少年ブドリが、「森にも野原にも、ちょうどあの年のブドリの家族のようになる人がたくさんできる」のを防ぐために、命も犠牲にする二十七歳の時までの成長の過程をえがいたものである。

 「みんながあんなつらい思いを市内で、沼ばたけを作れるよう、また火山だのひでりだの寒さだのを除く工夫がしたい」というブドリの思いは、郷土岩手の天災に苦しめられる貧しい農民たちに、肥料設計や稲の品種改良の指導をした賢治の、農民たちの幸福を願う思いでもある。

 てぐす飼いの男や沼ばたけの主人から厳しく仕事を教わり、クーボー博士には火山局を紹介され、火山局では老技師から機械の扱いや観測のしかたを習い、そしてその技術が市や村人達を救う。ブドリが活き活きと、素直に、逞しく成長していく姿とともに、出会った大人たちがブドリの人間的成長に大きな役割を果たしていることが印象に残る作品。

             草の実読書会           柳なつみ

読書会おすすめの一冊。

紹介:アカデミー愛とぴあ

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おはようスーちゃん


ジョーン.G.ロビンソン作・絵 中川李枝子訳

アリス館 2007年 1260円

 主人公はスーちゃんという小さい女の子です。まどに花もようのカーテンのかかった、黄色いドアの家にパパとママと3人で暮らしています。

 ある日、スーちゃんはママの誕生日に香水をプレゼントしようと思います。貯金箱にボタンと輪ゴムしかはいっていなかったスーちゃんは、香水を自分で作ることにしました。ジャムの空き瓶に花びらと水をいれて物置のうしろにかくし、香水ができるのを楽しみに待っていました。ところがママの誕生日の前の日、スーちゃんが瓶をのぞいてみると、瓶からはおそろしくいやなにおいがしたのです。これではママヘプレゼントすることはできません。

 香水をつくるのに失敗してがっかりしているスーちゃんを助けてくれたのは、お隣のバートンさんでした。バートンさんのおかげでスーちゃんはとても素敵なプレゼントをママに贈ることができたのです。

 この本は他にもスーちゃんの日常を描いたおはなしが8編収められています。スーちゃんは周囲の大人に暖かく見守られ、毎日をのびのびと過ごしています。その姿を通して日常のちょっとした出来事の持つ楽しさや幸せに気付くことができます。

 この作品は50年以上前にイギリスで生まれていますが、今も変らない子どもの素直な心がたくさんつまっています。


 自分で読むなら低学年向きですが、読み聞かせれば幼児から楽しめる作品です。親子でゆったりとしたときを過ごすのに最適の一冊です。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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トイレのおかげ


森枝雄司写真・文 はらさんぺい絵

福音館書店 2007年 1365円

 世界中の誰もが毎日お世話になるトイレ。人とトイレの付き合いかたは地域や時代によってさまざまです。

 スペインのバルセロナでは,クリスマスに聖母マリアや羊飼いの人形のほかに,なんと「カガネー」と呼ばれるウンコをしているかっこうの人形を飾るのだそうです。それはふだんの生活そのものの姿をしている人形を飾ることによって,現実をしっかり見つめようとするこの地方の人々の性格のあらわれなのだとか。

 このほかにも,有名なベルギーの小便小僧がなぜオシッコをしているのか,ヴェルサイユ宮殿にトイレがなかったというのは本当か,昔のトイレや世界の国々のトイレ,最新式の飛行機や宇宙船のトイレの秘密など,トイレにまつわる興味深い話がたくさん載っています。

児童書おすすめの一冊。小学校中学年向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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ルイジアナの青い空


キンバリー・ウィリス・ホルト著 河野万里子訳

白水社 2007年 2000円


1958年夏のアメリカ南部ルイジアナ州の田舎町。

ちょっと変わった名前の12歳の少女タイガーは、知的に<ゆっくり(スロー)>だけれど愛情深い両親と働き者のおばあちゃんの4人で質素に暮していました。勉強はとてもよくでき、野球は男の子たちよりもうまいタイガーですが、おしゃれに女らしくなりたいとひそかに思っていました。

ある日、心の支えだったおばあちゃんが心臓発作で急死。あこがれのドリーおばさんから「一緒に住もう」と誘われたタイガーは、都会で暮すことを考え始めますが……。

子どもと大人の狭間で揺れ動く思春期の少女の葛藤と成長を丁寧に描いています。タイガーを見守る周囲のまなざしも暖かく、読後感の爽やかな一冊です。

児童書おすすめの一冊。中学生向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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『北のはてのイービク』


ピーパルク・フロイゲン作 岩波書店

2008年 640円

 物語の舞台は極北のグリーンランドです。

 主人公のイービクたち一家は、本土から離れた島で暮らしていました。
長男のイービクは、この夏ついに父親に狩りを教えてもらえることになり、
自分を誇らしく思っていました。

 ある日、イービクとともに海にでた父親が、
セイウチを狩ろうとして逆にセイウチに殺されてしまいます。

 残されたのは、イービクと母親、年老いた祖父と幼い弟と妹です。
本土から離れた島に暮らすイービク一家は、
狩りの名人で食料を調達してきてくれる父親を亡くし大変な飢えに苦しみます。

 やがて冬になり,イービクは家族のために氷の結氷が始まったばかりの海を渡り、
本土に助けを求める旅にでます。しかしその旅も、イービクにとって大変苦しい旅となるのです。

 飢えに苦しむ一家の様子は息を飲む緊迫感があり、
厳しい自然の中で真摯に生きる人々の姿が伝わってきます。

素朴ですが力強い物語で、読後はその力強さが深く胸に残る一冊です。

児童書おすすめの一冊。小学校中学年~高学年向き。

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すべての犬に里親を! 阪神・淡路大震災 1556頭の物語


今西乃子著 講談社

2008年 1300円

 1995年1月17日,6000名以上の死者を出した阪神・淡路大震災。被害を受けたのは人間だけではありません。飼い主を探して街中をウロつく犬や猫。大混乱の中、1556頭もの犬たちを保護し、里親探しに奮闘した人たちがいました。

 獣医師や愛護団体のスタッフ、大勢のボランティアが、自身も震災の被害に合いながら、ゼロから動物救助をスタートさせ、保護した全ての動物を飼い主、あるいは新しい家族へ引き渡すという活動が描かれています。被災したがゆえに,家族同然の犬たちと暮らすことができなくなった飼い主たちが“犬の今後の幸せ”を最優先に考えて,泣く泣く里子に出す状況に,動物を飼うということはひとつの命を預かることだと考えさせられます。

 巻末には「動物と暮らす飼い主が災害時に備えるために」というページもあり,災害に備えてどんな準備をしておくべきか,救護に携わった人たちの視点から語られています。

児童書おすすめの一冊。小学校高学年から。

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オランウータンのジプシー


黒鳥英俊著

ポプラ社 2008年 1200円

 皆さんはジプシーというオランウータンを知っていますか。

 ジプシーは長寿記録世界第二位のオランウータンで,多摩動物公園に暮らしています。多摩動物公園が開園した1958年にインドネシアのカリマンタン島からやってきました。

 ジプシーは,毎週会いにくるファンがいるほどの人気者です。この本には,そんなジプシーの人気の秘密,魅力がたくさんつまっています。

 ジプシーは色々なものに興味を示し,気になったものがあるとお決まりのポーズ「ワシにくれ」をして,なんでも使ってみます。ぞうきんを渡すと人間のように掃除をし,スコップを渡すとガーデニングをしてみます。誰かに教えられたのではなく,人間の様子を見て自然に覚え,自分なりに考えて工夫して行動するのです。他にも自分から薬を飲んだり,引越しの時に郵送箱に進んで入って仲間のオランウータンに見本をみせるなどのエピソードが,写真とともに紹介されています。ジプシーというオランウータンの知能の高さには本当に驚かされます。

 この本を読むと一度ジプシーに会いたいと思う,そんな一冊です。

 児童書おすすめの一冊。小学校高学年から。

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ありのフェルダ


オンドジェイ・セコラさく・え 関沢明子やく

福音館書店 2008年 1400円

 ひとり暮しをすることになったありのフェルダは、家も建てるし、修理もするし、配達もするという「なんでも屋」を始めます。器用なフェルダは、こおろぎのおじさんから頼まれたラジオもあっという間に修理し、かめ虫のおかみさんのたくさんの子どもたちのために、遊園地まで作ってしまいます。

 てんとう虫の女の子ベルシカに恋をしたフェルダは、何とか彼女の気を引こうとしますが、それが大騒動になって……。

 作者のオンドジェイ・セコラは、チャペック兄弟やヨゼフ・ラダと同じ「チェコの子どもの本の黄金期」といわれる20世紀前半に活躍しました。陽気で親切ですがちょっとお調子者のありのフェルダは、チェコでは70年以上にわたって愛されている国民的人気者です。おっちょこちょいの木食い虫のピトリークさん、頼りになるこめつき虫のかじや、怒りっぽいおじいさんかたつむりなど、フェルダ以外の登場人物も個性的です。色彩豊かな絵も虫たちの世界を魅力的に描いています。

 児童書おすすめの一冊。小学校中学年以上。

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ふたごの兄弟の物語 上・下


トンケ・ドラフト著

岩波書店 2008年 上下巻各720円

 そっくりだけれど、性格はまったく違うふたごの物語です。

 人のいい靴屋の両親のもとにうまれた兄弟はやがて学校へ行く年齢になります。自由に遊んでいたいのに学校なんか行きたくないと,二人が考えたのは,一人のふりをして交代で学校へいくこと・・・。子ども時代の楽しいエピソードから話はスピーディに展開していきます。

 楽しく何の心配もないこども時代がすぎ,やがて元気な若者に成長しますが,15歳の時に両親が亡くなり,二人は世の中に出て仕事を探すことになります。

 兄のラウレンゾーは堅実な性質で美しいものがすき。有名な親方に弟子入りして貴金属細工師になります。一方世界中を旅して冒険がしたい弟のジャコモは,偶然出会った男から泥棒の修行をさせられることになります・・・。

 二人はそっくりなことを利用して入れ替わったり,トラブルにまきこまれたり,窮地に陥ったかと思えば,遠い国の王様になったりと,さまざまな冒険を繰り返していきます。ロマンスや謎解きもあり,物語の面白さを存分に味わうことができます。

 著者のトンケ・ドラフトは「王への手紙」「白い盾の少年騎士」でおなじみのオランダの人気作家。2作よりも,短編を読むような気軽な楽しみ方ができます。

 児童書おすすめの一冊。小学校中学年以上。

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シュトッフェルの飛行船


エーリカ・マン作 若松宣子訳

岩波書店 2008年 640円

 この本は1929年にノーベル文学賞を受賞した文豪トーマス・マンの娘であるエーリカ・マンによって書かれました。

 主人公は10歳の少年クリストフ・バーデルで,あだ名はシュトッフェルといいます。シュトッフェルは家族を助けるため,学校が終わると貸しボート屋でボートこぎとして働いていました。ある時,シュトッフェルは両親が生活の苦しさを嘆いている会話を聞いてしまいます。

 そこで,シュトッフェルは,アメリカで成功しているおじさんのところに行き,今の家の大変な状況をはなして助けてもらおうと考えます。

 両親には10日間だけ旅にでるとはなして,たった一人ドイツからアメリカへ出発します。シュトッフェルが立てたアメリカまでのルートは,飛行船に密航しようというものでした。

 郵便袋の中に忍び込み,飛行船への乗船に成功して,これでアメリカまでたどり着けると思った矢先,飛行船に大変な事態がおこります。

 スピーディーな展開で次々に事件がおこる作品と異なり,話の展開はゆったりしていますが,初めから終わりまで安定した面白さがありとても楽しい作品です。

児童書おすすめの一冊。小学校高学年以上。

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ビーバー族のしるし


エリザベス・ジョージ・スピア著 こだまともこ訳

あすなろ書房 2009年 1500円

 1768年の春、アメリカ・メイン州の新しい居住区に、12歳の少年マットと父さんが越してきました。ここに最初に住む白人として、二人は土地を切り開き、丸太小屋を建て、トウモロコシを植えます。

 夏、丸太小屋が完成すると、父さんは母さんと妹のセアラ、そして生まれたばかりの赤ん坊を迎えに行き、マットはたった一人で自給自足の留守番をすることになります。

 けっこう楽しい日々を過ごしていたマットですが、通りすがりの男に大事なライフル銃を盗まれたり、クマに食料を荒らされたりと災難が続き、ハチミツをとろうとしてミツバチの大群に襲われたところを、先住民ビーバー族の老人とその孫エイティアンに救われます。気が進まないながらもエイティアンとの交流が始まり、やがて友情が芽生えていきます。

 予定の7週間を過ぎても戻らない家族を待ち続けながら、開拓の森の中、一人で生き抜こうとする少年の成長が描かれています。マットとエイティアンの種族を超えた友情がさわやかな作品です。


児童書おすすめの一冊。小学校高学年以上。

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リンゴの丘のベッツィー


ドロシー・キャンフィールド・フィッシャー作 多賀京子訳 佐竹美保絵

徳間書店 2008年 1680円

 赤ちゃんの時に両親を亡くしたベッツィーは,父方の大おばさんに引き取られ,大おばさんと大おばさんの娘のフランシスおばさんに大切に大切に育てられてきました。フランシスおばさんは,ベッツィーの困っていることを何でも知っていて,悩みを聞いてくれるのでした。

 ところが,ベッツィーが9歳になったある日のこと,思いもよらないことが起こったのです。大おばさんが重い病気にかかり,ベッツィーの世話ができなくなってしまったのです。

 ベッツィーは,アメリカバーモンド州の田舎に住む母方の親戚に引き取られることになりました。そこには母方の大おばさんと大おじさんと2人の娘であるアンおばさんがいて,犬や猫もいました。

 ベッツィーは,自然豊かな農場で厳しくも温かい家族の中で暮らすうちに,「もしアンおばさんだったら,どうするだろう。」と自分で考え行動し,苦境を乗り切り自立した少女へと成長していきます。

 1917年に出版されて以来,世代を超えて読み継がれてきたアメリカ児童文学の名作です。
 日本では1950年に「ベッチィ物語」(中野好夫・中村妙子訳 評論社 調布市立図書館では所蔵していません。)として翻訳されましたが,長い間絶版となっていました。

 本書は1950年版と訳の雰囲気は違いますが,一人の少女が今までとは違った環境の中で成長し,自分らしさを取り戻していく様子が伝わってきます。
 また,子どもへの真の愛情とは何かを教えてくれます。昔子どもだった大人にもおすすめの1冊です。

児童書おすすめの一冊。小学校低学年以上。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『リンゴの丘のベッツィー』を図書館で探す ■

ボノボ-地球上で,一番ヒトに近いサル-


江口絵理著

そうえん社 2008年 1260円

 みなさんはボノボを知っていますか?ボノボは,地球上で一番ヒトに近いサルと言われている第四の類人猿です。

 ゴリラやオランウータンがヒトにとって親戚だとすると,チンパンジーやボノボは家族といえるくらいヒトに近い存在なのです。

 ボノボは非常に高い知能を持ち,平和をこのむ社会で暮らしています。ボノボはめったにあらそいをおこしません。なぜなら,動物界では唯一無二のケンカ回避術を持つからです。  

 あらそいのおこる場面の多くで,攻撃という手段ではなく,性行動でその状況をおさめます。食べ物をめぐるあらそい,魅力的なメスをめぐるあらそい,敵かもしれない見知らぬ相手に出くわしたとき,日常的にケンカになりそうなときに,ボノボは手近な相手をみつけて性行動をはじめ興奮や緊張をやわらげます。

 この本にはこのようなボノボの不思議な生態や,目を疑うほどの知能の高さ,危機に直面しているアフリカの現状,動物保護の難しさなど多岐にわたる内容が詰まっています。
著者は,「ある動物の目から世界を見たら,まったく新しい価値観が見えてきます。」と言っています。

 人間のうつし鏡ともいわれるボノボを知り,ボノボの視点から世界を見てみませんか。


児童書おすすめの一冊。小学校高学年以上。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『ボノボ-地球上で,一番ヒトに近いサル-』を図書館で探す ■

グリーンフィンガー-約束の庭-


ポール・メイ作 シャーン・ベイリー絵 横山和江訳
さ・え・ら書房 2009年 1700円


 主人公のケイトは、文字を読んだり書いたりすることが不得意で、そのコンプレックスから学校が好きになれず、問題を起こしてばかりいました。そんなケイトのため、家族はロンドンから田舎町へ引っ越すことにします。ところが引っ越し先は荒れ果てたひどい家でした。ケイトのお父さんが自分で修理をやってみたいという理由で、住むことに決めたのですが、お父さんは大工仕事にまったくの素人で、家の修理はなかなかうまくいきません。このことをきっかけに、両親の口ゲンカが増え始め、お母さんは家計を支えるために、田舎の家を離れ、ロンドンで仕事を続けることにします。

 ケイト自身も田舎暮らしを嫌っていたのですが、ウォルターというおじいさんに出会い、変わりはじめます。ウォルターの畑を手伝ううちに、植物に興味をもち、植物を育てる楽しさを知ります。ある時、自分たちの住む家が、かつてウォルターが暮らしていた家だと気づき、そこに美しい庭が広がっていたことがわかります。「庭がほしい」と言っていたお母さんのために、ケイトは庭の手入れをはじめます。

 少しずつ庭が手入れされ、輝きをとりもどしていく様子、庭の手入れを通じて、ケイトが自分自身を見つめ直し成長していく姿が丁寧に描かれており、先へ先へと読むことができます。

 物語のタイトルになっている「グリーンフィンガー」は、植物を育てることが上手な人をさします。ケイトはグリーンフィンガーになれたのでしょうか。

児童書おすすめの一冊。高学年から

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『グリーンフィンガー-約束の庭-』を図書館で探す ■

エンザロ村のかまど


さくまゆみこ文 沢田としき絵
福音館書店 2009年 1365円


 アフリカの国ケニアの首都のナイロビから車で半日の距離にある「エンザロ村」には,電気も水道もガスもありません。でも,著者が泊めてもらった家の奥さんは,食事の時間になると手早くテーブルの上に,スープやあげパンや炒り卵などの様々なご馳走を並べてくれました。これは,いったいどうしてなのでしょうか。

 その秘密は「エンザロ・ジコ」と呼ばれるかまどにありました。「エンザロ・ジコ」を考え出したのは,岸田袈裟(けさ)さんという日本人の女性で,岸田さんは30年近くケニアの地で,女性や子どもの生活を改善するために働いてきました。

 岸田さんは,ケニアの人たちが本当に必要としているのは何か,自分たちでお金をかけずにつくれるものはないかを村人たちとの話し合いを通して考え,セメントで作った箱に小石や砂を入れて水をこす装置を作りました。そうして「さらに安全な水を」と考えて出てきたアイディアがかまどだったのです。1度に3つの鍋を並べてかけることができ,食事の支度の時間が短縮できただけではなく,沸かした水を飲めるようになり赤ちゃんの死亡率が減ったのです。岸田さんは,今でも「エンザロ・ジコ」の講習会を開き,普及に努めています。

 さて,岩手県遠野市出身の岸田さんがケニアの地で広めたものは,もう一つあるのです。それは,「わらぞうりづくり」です。ケニアでは,はだしの人が沢山います。はだしは,気持ちがいいし,足の裏を丈夫にするという利点もあるのですが,足の裏の傷から菌や寄生虫が入ってしまうことがあります。岸田さんは,「わらぞうりづくり」を初め助産婦さんに教えたのですが,それが小学生の間に広まり,けがで学校を休む子どもが減ったということです。

 私たちの国日本では,お金を出せば何でも手に入ります。でも,日本が手放してしまった「お金をかけずに豊かな暮らしを営んでいく幸せ」を,この本は私たちに教えてくれます。


児童書おすすめの1冊。 高学年から

紹介:調布市立図書館 児童担当

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人魚のおくりもの


バーバラ・レオニ・ピカード作 白坂麻衣子訳
長崎出版 2009年 1470円


 漁師の網に人魚がかかりました。人魚は海へもどしてくれるよう漁師に懇願しますが、旅の男に売られ、行く先々の町や村で見世物にされます。
 さてある町に、働くのが嫌いなお人好しの若者がいました。若者は檻に入れられた人魚をかわいそうに思い、近くの川に逃がしてやります。人魚を盗んだ罪で若者は捕まり、しばり首にされることになりますが、いよいよという時に一羽のカモメが飛んできて「人魚さんからの、おくりもの」と叫んで貝殻を落としていきます。小さな貝殻の中からかすかな水と風が流れ出し……。

 表題作「人魚のおくりもの」のほかに、美しく勇敢な騎士が、醜い貴婦人の3つの願いをきくことでこの世で最も美しい妻を見つける「シナノキの貴婦人」や、物忘れがひどくしかられてばかりの少年が、小さなお城を見つけたことで幸運をつかむ「麦畑のお城」など、全部で8編収められています。

 どの作品も昔話や神話を思わせる雰囲気を持ち、物語の世界に引き込まれます。折に触れて何度も読み返したくなるような作品です。


児童書おすすめの1冊。 高学年から

紹介:調布市立図書館 児童担当

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楽しいスケート遠足


ヒルダ・ファン・ストックム作/絵 ふなとよし子訳
福音館書店 2009年 1365円


 低地の多いオランダは国中に運河や水路がたくさんあり,冬になるとそれがすべて凍ります。そして大人も子どもも凍った運河でスケートをすることを楽しみにしているのです。

 エストル村に住むエベルトとアフケのふたごの兄妹もスケートができる日を心待ちにしていました。そして本格的な冬が到来すると,二人の担任の先生はクラスの子ども16人を連れ,運河を通って初めて訪れる町まで向かう一日がかりのスケート遠足を計画します。

 先生の引っ張ってくれるポールにつかまって滑ったり,氷の上に張られたテントのお店でココアを飲んだりしながら,みんなは楽しいひとときを過ごしますが,途中エベルトは魚釣り用の穴に落ちておぼれそうになってしまいます。

 びしょぬれになったエベルトは,近くの農家にお世話になりますが,そこではエベルトだけでなくクラスのみんなが雪入りのパンケーキをご馳走になるなどの温かいもてなしを受けます。その後も楽しい出来事や,少しはらはらする出来事が次々に起こります。さて無事に遠足を終えることができたのでしょうか?

 読後は,登場人物とともに遠足に行ってきたような満足感が得られます。ふたごを中心に子どもたちの姿が生き生きと描かれていることで,遠足の一日を追っただけでない厚みのある豊かな物語になっています。背景となるオランダの風物も魅力的で,作者本人により描かれた絵も大変美しく一読をおすすめしたい本です。

児童書おすすめの1冊。小学校中学年向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

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氷の上のボーツマン


ベンノー・プルードラ作 上田真而子訳 ヴェルナー・クレムケ絵
岩波書店 2009年 1470円


 舞台は流氷がただよう冬の港です。凍てつく寒さが続き,雪がどっさり降ったある日,3人の子どもたちが,船長さんと船で暮らしている子犬のボーツマンと遊ぼうとやって来ました。一番大きい7歳のウーヴェ,暴れ者でお調子者の6歳のヨッヘン,まだ小さい5歳の女の子カトリンです。3人はボーツマンを連れ出して,入り江にできた氷の原っぱへ遊びにいきます。

 氷の原っぱは鏡のようで,そこには静まりかえった世界が広がっていました。その先には真っ黒な海があるばかりです。ウーヴェが止めるのも聞かず,ヨッヘンと子犬のボーツマンは水際の氷の上で踊りだします。すると突然氷が割れて,ヨッヘンと子犬のボーツマンの乗った氷が切り離されてしまいます。

 ヨッヘンはジャンプをしてなんとか氷の原っぱに戻ってきましたが,子犬のボーツマンは氷の上に取り残されてしまい,ボーツマンを乗せた氷の塊はどんどん流されていきます。ウーヴェはなんとかボーツマンを助けようとしますが,ヨッヘンは恐くなって逃げ出してしまい…。はたしてボーツマンは無事に陸地に戻って来られるのでしょうか?

 この物語は1959年に旧東ドイツで出版され,2009年に初めて日本で翻訳・出版がされました。挿絵は黒と赤の二色刷りの版画で,独特の雰囲気がある素晴らしいものになっています。半世紀もの時を経て日本に紹介された,とても趣のある作品です。

児童書おすすめの1冊 小学校中学年向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

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