リンク

調布市の地域情報ポータルサイト ちょうふどっとこむ

※ご注意※

書籍の画像につきましては、便宜上「アマゾン」のサイトのものを使用しております。

ご希望の書籍がございましたら、図書館をご利用いただくか、調布市内の書店をご利用ください。(市内書店の検索は「ちょうふどっとこむ」からどうぞ)

児童書(こども)一覧

「ハコの牧場」


北村恵理 著 金井田英津子え 福音館書店 2006


まだ戦争の影を引きずる1950年代、北海道石狩平野。沼のほとりの牧場に暮らす小学2年生春子(ハコ)は、好奇心旺盛でいつも牧場を駆けまわり元気いっぱい。でもなぜか、思わぬ事件を引き起こしてしまう。
洪水や冷害で牧場を経営している大人たちには厳しい毎日だが、ハコの(自然の中での)遊びの世界や家族たちのふれあいは常に豊かである。

絵本『こぐまのたろ』の著者北村恵理さんの子ども時代の思い出を2年間に凝縮した物語。
人が自然と折り合いをつけながら暮らす様子。そして、自然の中で暮らすことの喜びが感じられる作品。

児童書おすすめの一冊。高学年向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 「ハコの牧場」を図書館で探す ■

天山(てんざん)の巫女(みこ)ソニン 一黄金の燕


菅野雪虫 著 講談社 2006 1400円


生後まもなく,巫女(みこ)に見こまれ天山(てんざん)につれていかれたソニン。
しかし12年間の修行の後,巫女としての素質がないと里に帰されてしまう。
家族との温かい生活に戻ったのもつかのま,今度は思いがけない役割を担ってお城に召されることとなった。
しかしソニンはそこで大きな陰謀(いんぼう)に巻き込まれていく・・・。

朝鮮半島の古代を連想させる時代背景,王が国を統治し,巫女の力があがめられる世界でくりひろげられる12歳の落ちこぼれ巫女ソニンの物語。

天山で育ったソニンの感性は独特であり,明るく前向きな姿はつい応援したくなる。
脇を固める登場人物も魅力的。
さらに登場人物に負けないストーリー展開,これらが重なり読む人の心をひきつける。

児童書おすすめの一冊。中学生向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 「天山の巫女ソニン 一黄金の燕」を図書館で探す ■ 

愛をみつけたうさぎ-エドワード・テュレインの奇跡の旅-


ケイト・ディカミロ作 バグラム・イバトーリーン絵 子安亜弥訳  ポプラ社 2006 1400円

持ち主の女の子に愛されていても,自分は愛することを知らない陶器のうさぎエドワード。
ある時,女の子と共に船旅に出たエドワードは船から落ち,女の子とはぐれてしまう。
その後,エドワードは年老いた漁師夫婦や飼い犬と旅を続ける渡り者の男,病気で寝たきりの少女など様々な人のもとを転々とすることになるが…。

愛情を感じ始めたところに,突如としてやってくるつらい別れ。出会いと別れの繰り返しを通して,徐々に変化していくエドワードの心の動きが丁寧に描かれた作品。
最後には心温まる出会いと結末が待っている。


児童書おすすめの一冊。高学年向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当


■ 「愛をみつけたうさぎ-エドワード・テュレインの奇跡の旅-」を図書館で探す ■

百まいのドレス


エレナー・エスティス作 石井桃子訳 ルイス・スロボドキン絵

「あたし、うちに、ドレス百まい、持ってるの。」

ポーランドからの移民で、いつも同じはげちょろけの青いワンピースを着ているワンダが言ったことから、ワンダをからかう遊びが始まった。
マデラインは、人気者で活発な親友のペギーが先頭に立ってするこの遊びが内心嫌でたまらないが、ペギーにもうやめようと言う勇気もなく思い悩む。
ワンダは、デザイン・コンクールに美しい百枚のドレスの絵を残して学校を去っていった。
 ワンダをめぐる、マデラインの心の動きを鮮やかに描いた作品。
マデラインの苦しみとともに、百枚のドレスの絵が読む者に様々な想像を呼び起こし、忘れがたい。
「百まいのきもの」という題名で親しまれてきた絵本が同じ訳者によって50年ぶりに改訳され、挿絵も色鮮やかになって、絵物語の形で出版されたもの。


児童書おすすめの一冊。小学校中学年以上向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当


■ 「百まいのドレス」を図書館で探す ■

ぼくはマサイ ―ライオンの大地で育つ―


ジョゼフ・レマソライ・レクトン著 さくまゆみこ訳 さ・え・ら書房 2006年2月刊 1500円

著者は遊牧民の子どもとしてケニアの北東部に生まれる。父と2人の母,3人の兄の家族とともにアフリカの草原で牛を飼い,マサイ族の伝統と文化を大切にした暮らしをしていた。体に布をまとい手には槍を持ち,牛のために良い草や水を求めて一日に数十キロも歩き,時にはライオンに襲われることもある暮らしは原始的にも思えるが「いちばん公平ですばらしいシステムをもった社会だと思っている」と著者は言う。村ではみんなが助け合い,子どもも大人も役割に応じて働き,年長者を敬い,誰も飢えることがなく,みんなが平等な社会なのだ。

著者は6歳のとき,一家族から一人が学校に行くというケニア政府の方針で,西洋風の教育をする学校に行き始める。マサイの伝統文化を基盤に持ちながら,西洋文化をバランスよく取り入れる賢明さ,旺盛な好奇心や人一倍の努力によりハイスクールに進学,やがて十代後半でアメリカの大学に進むことになる。現在は一年の半分はアメリカで教鞭を執り,のこりの半分はケニアで社会貢献活動を精力的に行っているという。

著者の人間的な魅力にあふれた半生が,マサイの興味深いエピソードとともに語られ,生きることの素晴らしさを感じさせてくれる1冊である。

対象は小学校高学年以上。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 「ぼくはマサイ ―ライオンの大地で育つ―」を図書館で探す ■

マイケルとスーザンは一年生


ドロシー・マリノさく まさきるりこやく アリス館 2006

町に住むマイケルと農場に住むスーザンは、もうすぐ6歳の誕生日を迎える。ふたりは初めは知らない者同士だったが、同じ日に隣の家で誕生日パーティーを開いたことから友だちになる。偶然出会ったふたりは、今度新一年生となり、同じ学校へ行くことがわかる。
初登校のハラハラドキドキ、スーザンの農場への遠足など、学校での出来事が作者の温かいまなざしで語られる。
子どもの心の動きが見事に描かれ、ふたりを取り囲む温かい家族も魅力的。古き良き時代のアメリカの家族生活を、細やかな筆致で描いたおはなし。

児童書おすすめの一冊。低学年向き。


紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 「マイケルとスーザンは一年生」を図書館で探す ■

ふしぎなロシア人形バーバ

ルース・エインズワーク作 ジョーン・ヒクソン画 多賀京子訳 福音館書店 2007

おはなしの舞台は人形たちの住むバラやしき。かべは白く、屋根が赤い四角い家です。
バラやしきは店で売れなかったおもちゃや、家の中でどこかにいってしまったおもちゃたちが行くしあわせの国にあります。
バラやしきにはピアノの名人フレデリックとフランス人形のルル。いたずら好きの男の子のウィリーと、バラやしきの家事をするマーサが暮らしていました。
そこにマーサの姪でおてんばな女の子ベラと、住むところが見つからないロシア人形のバーバがやってきました。住人が6人になったバラやしきはますます賑やかになり、楽しい毎日を送っていたのですが、どうもバーバの様子がおかしいのです。
実はバーバにはあっと驚く秘密が隠されていたのです。
ストーリーに躍動感がありぐいぐい引っ張っていく。それぞれの個性が輝く人形たちの日常が生き生きと描かれた楽しい作品。

児童書おすすめの一冊。小学校中学年以上向き。


紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 「ふしぎなロシア人形バーバ」を図書館で探す ■

棚田を歩けば


青柳健二文・写真 福音館書店 2007 1900円
山の斜面や谷間に、階段状に作られた田んぼのことを棚田といいます。人間が生きていくために、自然から許されるような範囲で必要最低限の手を加えて作られた棚田は、それぞれ土地の形によって、形もいろいろ。棚田は、自然と人間が一緒になって作り上げた美しい“芸術作品”です。

この本は、日本を中心に世界中の棚田をめぐっている著者による棚田の写真集です。

棚田では米が作られています。農家の人々と米作りの1年間、棚田で出会える生き物を、美しい写真と簡潔な文章で紹介しています。
日本のみならず、中国やベトナム、イランなど、世界の棚田の写真も見ることができます。

児童書おすすめの一冊。小学校中学年向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 「棚田を歩けば」を図書館で探す ■

サリーおばさんとの一週間


ポリー・ホーヴァス作 北篠文緒訳 偕成社店 2007 1470円


 「両親が一週間の海外旅行に出ようとしていた矢先,留守中の三人の子どもの面倒をみてくれるはずだったベビーシッターが病気になってしまいます。代わりの人はみつからず,頼りとするライラ伯母さんもあいにく旅行中です。
 子どもたちのパパにはもうひとりサリーというカナダに住むお姉さんがいますが,サリーに頼むのは問題外だとパパは言います。でも最後にはママがパパを説得し,サリーおばさんに来てもらうことになって,子どもたちは初対面のサリーおばさんと一週間のお留守番をします。外見も言動も型破りのサリーおばさんは,毎晩子どもたちにおもしろい話をしてくれて,こどもたちはおばさんが大好きになります。」
                          (訳者あとがきより)

 サリーおばさんの語るお話は,おばさんの子ども時代の体験で,大家族のなかで起こったわくわくするようなエピソードからぞっとするような隣人の話,トロルや魔女が登場する怖い話など本当か嘘かわからないようなお話ばかりですが、子どもたちはすっかり引き込まれてしまいます。そして最後の夜におばさんが語ったのは,おばさんの弟である子どもたちのパパとの苦い思い出でした……。

 風変わりなおばさんのユーモラスな語り口に引き込まれながら,結末で明かされる子どもの嫉妬心がまねいた悲しいできごとと,それを子どもたちへのメッセージとする明るい展望にさわやかな感動をおぼえます。単純なハッピーエンドではありませんが,子どもたちの力でサリーおばさんとパパとの関係が修復しそうな今後が期待できる結末です。

児童書おすすめの一冊。小学校高学年から中学生向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 「サリーおばさんとの一週間」を図書館で探す ■

まちのコウモリ


中川雄三写真・文 ポプラ社 2007 1200円


 夕暮れのあかね空をひらりひらりと飛んでいるアブラコウモリ。
傘みたいな翼、柔らかな毛におおわれた体、とがった歯を持つコウモリは、空を自由に飛びまわれる唯一のけものです。

高層ビルがたちならぶ大都会や多くの人が行きかうネオンの街にも、コウモリは住んでいます。ビルや橋げた、学校の校舎など、建物の狭いすき間がコウモリの住みか。昼間は眠って過ごしますが、日が沈むと、たたんでいた翼を大きく広げて、建物のすき間のねぐらから夜の空へと飛び出します。そして大好物の蚊や羽虫などを捕らえて食べるのです。

意外に私たちの身近にいるコウモリの暮らしをページいっぱいの写真で紹介した知識の絵本です。

児童書おすすめの一冊。小学校低学年向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 「まちのコウモリ」を図書館で探す ■

帰ってきた船乗り人形


ルーマー・ゴッデン作 おびかゆうこ訳 たかおゆうこ絵

徳間書店 2007年 1600円


この物語は、人間の生活と人形の生活がクロスーオーバーして描かれるユニークな舞台の中で進んでいきます。

シャーンは英国のウェールズの海辺の町に住む8歳の女の子。シャーンの持つ「人形の家」には、お母さん・お姉さん・双子の女の子の人形はいますが、お父さんやお兄さんの人形はいません。2人は行方不明になってしまったのです。

この家に新しくやってきた船乗り人形のカーリーは、お父さんやお兄さんが行方不明になったという話を聞き、海を渡って探しにいきたいと考えていました。しかし、そんな願いも人形の身ではどうすることもできません。

そんなある日のこと、カーリーは窓の外に落ちてしまいます。カーリーを助けてくれたのは、この町の船乗り学校に通うフランス人の少年ベルトランでした。ベルトランは、カーリーを拾いあげ胸のポケットにしまい、海へ訓練に出て行きます。カーリーもまた念願がかない大海原へ出発しました。カーリーはお父さんやお兄さんを探し出し、人形の家に戻ることができるのでしょうか。

思わず笑顔がこぼれる素敵な結末が待っています。

児童書おすすめの一冊。小学校高学年向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 「帰ってきた船乗り人形」を図書館で探す ■

トメック-さかさま川の水 1-


ジャン=クロード・ムルルヴァ作 堀内紅子訳 平澤朋子画

福音館書店 2007年 1700円


 代々続く村のよろずやを一人で切り盛りしていたトメックは,ある日お店でさかさまに流れる川を探して旅をしているという少女ハンナに出会います。ハンナに一目ぼれしたトメックは、彼女を追って、その川を探す旅に出ることにしました。トメックはハンナと再会し,無事さかさま川にたどり着くことができるのでしょうか。

 「ワスレの森」,眠りを誘う花畑,香水作りの村,「どこにもない島」など,トメックの行く手には不思議な場所とたくさんの出会いが待ち受けています。

 「さかさま川の水」シリーズは,トメックの視点で語られる『トメック』とハンナの視点で語られる『ハンナ』の二部作で,それぞれの冒険が縦糸と横糸になって、ひとつの物語が作り上げられています。登場人物や舞台設定が興味深く,お話の世界にぐいぐい引き込まれます。二冊合わせてお楽しみください。

児童書おすすめの一冊。小学校高学年向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 「トメック-さかさま川の水 1-」を図書館で探す ■

ポータブル・ゴースト


マーガレット・マーヒー作 幾島幸子訳

岩波書店 2007年6月 1800円

 タイトルを直訳すると「持ち運びできる幽霊」。おかしな書名に興味を持って読み始めると,その軽妙な語り口の奇想天外なストーリーに思わず引き込まれてしまいます。

 主人公の少女ディッタは,学校の図書室のすみにいる不思議な少年が気になってしかたありません。思い切って声をかけてみると,少年は図書室から離れられない幽霊だとわかります。また一方で,ディッタの友人のマックスの様子がおかしくなり,その理由をたどっていくと,マックスの新築した家に住みついた恐ろしい幽霊の存在が明らかになります。

 ディッタは,マックスを幽霊から救い出すため,パソコンおたくの妹や変わり者の老人,さらに図書室の少年幽霊にも助けられて,恐怖に立ち向かっていきます。

 ハラハラドキドキのストーリーの中に,幽霊も含めた個性的な登場人物が生き生きとかかわり合い,それぞれが成長していきます。パソコンが有効な小道具として使われ,予想外の結末へと導いていくあたりもいかにも現代的で,読者に親しまれそうです。

 作者は1936年生まれのニュージーランドの児童文学作家。絵本から読み物まで多数の作品があり,2006年度国際アンデルセン賞・作家賞を受賞するなど国際的にも高い評価を受けています。

児童書おすすめの一冊。小学校高学年向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 「ポータブル・ゴースト」を図書館で探す ■

たたみの部屋の写真展


朝比奈蓉子作

偕成社 2007年 1200円

 空き家を見つけたタモツとユウイチは、その庭に勝手にカメの池を掘って自分たちの隠れ家にしていました。すると突然、家主のおばあさんとその娘のなつみさんが帰ってきます。おばあさんはタモツを見ると「とおる」と呼びかけます。実はおばあさんは認知症で、とおるは亡くなったおばあさんの息子でした。

夏休みの間、タモツはとおるとしてこの家に通うことになります。おばあさんやなつみさんとの係わりのなかで、とまどいつつも老いや家族について考え、タモツは一回り成長します。

認知症を日常の生活のなかで気負いなく捉え、好感が持てる作品です。主人公の中学生やおばあさんを取り巻く人々の心の交流が温かく爽やかに描かれています。

児童書おすすめの一冊。小学校高学年以上向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 「たたみの部屋の写真展」を図書館で探す ■

グスコーブドリの伝記


宮沢賢治 作

くもん出版 1993年


  この物語は、飢饉で両親を失い、妹とも生き別れになった少年ブドリが、「森にも野原にも、ちょうどあの年のブドリの家族のようになる人がたくさんできる」のを防ぐために、命も犠牲にする二十七歳の時までの成長の過程をえがいたものである。

 「みんながあんなつらい思いを市内で、沼ばたけを作れるよう、また火山だのひでりだの寒さだのを除く工夫がしたい」というブドリの思いは、郷土岩手の天災に苦しめられる貧しい農民たちに、肥料設計や稲の品種改良の指導をした賢治の、農民たちの幸福を願う思いでもある。

 てぐす飼いの男や沼ばたけの主人から厳しく仕事を教わり、クーボー博士には火山局を紹介され、火山局では老技師から機械の扱いや観測のしかたを習い、そしてその技術が市や村人達を救う。ブドリが活き活きと、素直に、逞しく成長していく姿とともに、出会った大人たちがブドリの人間的成長に大きな役割を果たしていることが印象に残る作品。

             草の実読書会           柳なつみ

読書会おすすめの一冊。

紹介:アカデミー愛とぴあ

■ 「グスコーブドリの伝記」を図書館で探す ■

おはようスーちゃん


ジョーン.G.ロビンソン作・絵 中川李枝子訳

アリス館 2007年 1260円

 主人公はスーちゃんという小さい女の子です。まどに花もようのカーテンのかかった、黄色いドアの家にパパとママと3人で暮らしています。

 ある日、スーちゃんはママの誕生日に香水をプレゼントしようと思います。貯金箱にボタンと輪ゴムしかはいっていなかったスーちゃんは、香水を自分で作ることにしました。ジャムの空き瓶に花びらと水をいれて物置のうしろにかくし、香水ができるのを楽しみに待っていました。ところがママの誕生日の前の日、スーちゃんが瓶をのぞいてみると、瓶からはおそろしくいやなにおいがしたのです。これではママヘプレゼントすることはできません。

 香水をつくるのに失敗してがっかりしているスーちゃんを助けてくれたのは、お隣のバートンさんでした。バートンさんのおかげでスーちゃんはとても素敵なプレゼントをママに贈ることができたのです。

 この本は他にもスーちゃんの日常を描いたおはなしが8編収められています。スーちゃんは周囲の大人に暖かく見守られ、毎日をのびのびと過ごしています。その姿を通して日常のちょっとした出来事の持つ楽しさや幸せに気付くことができます。

 この作品は50年以上前にイギリスで生まれていますが、今も変らない子どもの素直な心がたくさんつまっています。


 自分で読むなら低学年向きですが、読み聞かせれば幼児から楽しめる作品です。親子でゆったりとしたときを過ごすのに最適の一冊です。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 「おはようスーちゃん」を図書館で探す ■

トイレのおかげ


森枝雄司写真・文 はらさんぺい絵

福音館書店 2007年 1365円

 世界中の誰もが毎日お世話になるトイレ。人とトイレの付き合いかたは地域や時代によってさまざまです。

 スペインのバルセロナでは,クリスマスに聖母マリアや羊飼いの人形のほかに,なんと「カガネー」と呼ばれるウンコをしているかっこうの人形を飾るのだそうです。それはふだんの生活そのものの姿をしている人形を飾ることによって,現実をしっかり見つめようとするこの地方の人々の性格のあらわれなのだとか。

 このほかにも,有名なベルギーの小便小僧がなぜオシッコをしているのか,ヴェルサイユ宮殿にトイレがなかったというのは本当か,昔のトイレや世界の国々のトイレ,最新式の飛行機や宇宙船のトイレの秘密など,トイレにまつわる興味深い話がたくさん載っています。

児童書おすすめの一冊。小学校中学年向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 「トイレのおかげ」を図書館で探す ■

ルイジアナの青い空


キンバリー・ウィリス・ホルト著 河野万里子訳

白水社 2007年 2000円


1958年夏のアメリカ南部ルイジアナ州の田舎町。

ちょっと変わった名前の12歳の少女タイガーは、知的に<ゆっくり(スロー)>だけれど愛情深い両親と働き者のおばあちゃんの4人で質素に暮していました。勉強はとてもよくでき、野球は男の子たちよりもうまいタイガーですが、おしゃれに女らしくなりたいとひそかに思っていました。

ある日、心の支えだったおばあちゃんが心臓発作で急死。あこがれのドリーおばさんから「一緒に住もう」と誘われたタイガーは、都会で暮すことを考え始めますが……。

子どもと大人の狭間で揺れ動く思春期の少女の葛藤と成長を丁寧に描いています。タイガーを見守る周囲のまなざしも暖かく、読後感の爽やかな一冊です。

児童書おすすめの一冊。中学生向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 「ルイジアナの青い空」を図書館で探す ■

『北のはてのイービク』


ピーパルク・フロイゲン作 岩波書店

2008年 640円

 物語の舞台は極北のグリーンランドです。

 主人公のイービクたち一家は、本土から離れた島で暮らしていました。
長男のイービクは、この夏ついに父親に狩りを教えてもらえることになり、
自分を誇らしく思っていました。

 ある日、イービクとともに海にでた父親が、
セイウチを狩ろうとして逆にセイウチに殺されてしまいます。

 残されたのは、イービクと母親、年老いた祖父と幼い弟と妹です。
本土から離れた島に暮らすイービク一家は、
狩りの名人で食料を調達してきてくれる父親を亡くし大変な飢えに苦しみます。

 やがて冬になり,イービクは家族のために氷の結氷が始まったばかりの海を渡り、
本土に助けを求める旅にでます。しかしその旅も、イービクにとって大変苦しい旅となるのです。

 飢えに苦しむ一家の様子は息を飲む緊迫感があり、
厳しい自然の中で真摯に生きる人々の姿が伝わってきます。

素朴ですが力強い物語で、読後はその力強さが深く胸に残る一冊です。

児童書おすすめの一冊。小学校中学年~高学年向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『北のはてのイービク』を図書館で探す ■

すべての犬に里親を! 阪神・淡路大震災 1556頭の物語


今西乃子著 講談社

2008年 1300円

 1995年1月17日,6000名以上の死者を出した阪神・淡路大震災。被害を受けたのは人間だけではありません。飼い主を探して街中をウロつく犬や猫。大混乱の中、1556頭もの犬たちを保護し、里親探しに奮闘した人たちがいました。

 獣医師や愛護団体のスタッフ、大勢のボランティアが、自身も震災の被害に合いながら、ゼロから動物救助をスタートさせ、保護した全ての動物を飼い主、あるいは新しい家族へ引き渡すという活動が描かれています。被災したがゆえに,家族同然の犬たちと暮らすことができなくなった飼い主たちが“犬の今後の幸せ”を最優先に考えて,泣く泣く里子に出す状況に,動物を飼うということはひとつの命を預かることだと考えさせられます。

 巻末には「動物と暮らす飼い主が災害時に備えるために」というページもあり,災害に備えてどんな準備をしておくべきか,救護に携わった人たちの視点から語られています。

児童書おすすめの一冊。小学校高学年から。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『すべての犬に里親を! 阪神・淡路大震災 1556頭の物語』を図書館で探す ■

オランウータンのジプシー


黒鳥英俊著

ポプラ社 2008年 1200円

 皆さんはジプシーというオランウータンを知っていますか。

 ジプシーは長寿記録世界第二位のオランウータンで,多摩動物公園に暮らしています。多摩動物公園が開園した1958年にインドネシアのカリマンタン島からやってきました。

 ジプシーは,毎週会いにくるファンがいるほどの人気者です。この本には,そんなジプシーの人気の秘密,魅力がたくさんつまっています。

 ジプシーは色々なものに興味を示し,気になったものがあるとお決まりのポーズ「ワシにくれ」をして,なんでも使ってみます。ぞうきんを渡すと人間のように掃除をし,スコップを渡すとガーデニングをしてみます。誰かに教えられたのではなく,人間の様子を見て自然に覚え,自分なりに考えて工夫して行動するのです。他にも自分から薬を飲んだり,引越しの時に郵送箱に進んで入って仲間のオランウータンに見本をみせるなどのエピソードが,写真とともに紹介されています。ジプシーというオランウータンの知能の高さには本当に驚かされます。

 この本を読むと一度ジプシーに会いたいと思う,そんな一冊です。

 児童書おすすめの一冊。小学校高学年から。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『オランウータンのジプシー』を図書館で探す ■

ありのフェルダ


オンドジェイ・セコラさく・え 関沢明子やく

福音館書店 2008年 1400円

 ひとり暮しをすることになったありのフェルダは、家も建てるし、修理もするし、配達もするという「なんでも屋」を始めます。器用なフェルダは、こおろぎのおじさんから頼まれたラジオもあっという間に修理し、かめ虫のおかみさんのたくさんの子どもたちのために、遊園地まで作ってしまいます。

 てんとう虫の女の子ベルシカに恋をしたフェルダは、何とか彼女の気を引こうとしますが、それが大騒動になって……。

 作者のオンドジェイ・セコラは、チャペック兄弟やヨゼフ・ラダと同じ「チェコの子どもの本の黄金期」といわれる20世紀前半に活躍しました。陽気で親切ですがちょっとお調子者のありのフェルダは、チェコでは70年以上にわたって愛されている国民的人気者です。おっちょこちょいの木食い虫のピトリークさん、頼りになるこめつき虫のかじや、怒りっぽいおじいさんかたつむりなど、フェルダ以外の登場人物も個性的です。色彩豊かな絵も虫たちの世界を魅力的に描いています。

 児童書おすすめの一冊。小学校中学年以上。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『ありのフェルダ』を図書館で探す ■

ふたごの兄弟の物語 上・下


トンケ・ドラフト著

岩波書店 2008年 上下巻各720円

 そっくりだけれど、性格はまったく違うふたごの物語です。

 人のいい靴屋の両親のもとにうまれた兄弟はやがて学校へ行く年齢になります。自由に遊んでいたいのに学校なんか行きたくないと,二人が考えたのは,一人のふりをして交代で学校へいくこと・・・。子ども時代の楽しいエピソードから話はスピーディに展開していきます。

 楽しく何の心配もないこども時代がすぎ,やがて元気な若者に成長しますが,15歳の時に両親が亡くなり,二人は世の中に出て仕事を探すことになります。

 兄のラウレンゾーは堅実な性質で美しいものがすき。有名な親方に弟子入りして貴金属細工師になります。一方世界中を旅して冒険がしたい弟のジャコモは,偶然出会った男から泥棒の修行をさせられることになります・・・。

 二人はそっくりなことを利用して入れ替わったり,トラブルにまきこまれたり,窮地に陥ったかと思えば,遠い国の王様になったりと,さまざまな冒険を繰り返していきます。ロマンスや謎解きもあり,物語の面白さを存分に味わうことができます。

 著者のトンケ・ドラフトは「王への手紙」「白い盾の少年騎士」でおなじみのオランダの人気作家。2作よりも,短編を読むような気軽な楽しみ方ができます。

 児童書おすすめの一冊。小学校中学年以上。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『ふたごの兄弟の物語(上)』を図書館で探す ■

■ 『ふたごの兄弟の物語(下)』を図書館で探す ■

シュトッフェルの飛行船


エーリカ・マン作 若松宣子訳

岩波書店 2008年 640円

 この本は1929年にノーベル文学賞を受賞した文豪トーマス・マンの娘であるエーリカ・マンによって書かれました。

 主人公は10歳の少年クリストフ・バーデルで,あだ名はシュトッフェルといいます。シュトッフェルは家族を助けるため,学校が終わると貸しボート屋でボートこぎとして働いていました。ある時,シュトッフェルは両親が生活の苦しさを嘆いている会話を聞いてしまいます。

 そこで,シュトッフェルは,アメリカで成功しているおじさんのところに行き,今の家の大変な状況をはなして助けてもらおうと考えます。

 両親には10日間だけ旅にでるとはなして,たった一人ドイツからアメリカへ出発します。シュトッフェルが立てたアメリカまでのルートは,飛行船に密航しようというものでした。

 郵便袋の中に忍び込み,飛行船への乗船に成功して,これでアメリカまでたどり着けると思った矢先,飛行船に大変な事態がおこります。

 スピーディーな展開で次々に事件がおこる作品と異なり,話の展開はゆったりしていますが,初めから終わりまで安定した面白さがありとても楽しい作品です。

児童書おすすめの一冊。小学校高学年以上。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『シュトッフェルの飛行船』を図書館で探す ■

ビーバー族のしるし


エリザベス・ジョージ・スピア著 こだまともこ訳

あすなろ書房 2009年 1500円

 1768年の春、アメリカ・メイン州の新しい居住区に、12歳の少年マットと父さんが越してきました。ここに最初に住む白人として、二人は土地を切り開き、丸太小屋を建て、トウモロコシを植えます。

 夏、丸太小屋が完成すると、父さんは母さんと妹のセアラ、そして生まれたばかりの赤ん坊を迎えに行き、マットはたった一人で自給自足の留守番をすることになります。

 けっこう楽しい日々を過ごしていたマットですが、通りすがりの男に大事なライフル銃を盗まれたり、クマに食料を荒らされたりと災難が続き、ハチミツをとろうとしてミツバチの大群に襲われたところを、先住民ビーバー族の老人とその孫エイティアンに救われます。気が進まないながらもエイティアンとの交流が始まり、やがて友情が芽生えていきます。

 予定の7週間を過ぎても戻らない家族を待ち続けながら、開拓の森の中、一人で生き抜こうとする少年の成長が描かれています。マットとエイティアンの種族を超えた友情がさわやかな作品です。


児童書おすすめの一冊。小学校高学年以上。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『ビーバー族のしるし』を図書館で探す ■

リンゴの丘のベッツィー


ドロシー・キャンフィールド・フィッシャー作 多賀京子訳 佐竹美保絵

徳間書店 2008年 1680円

 赤ちゃんの時に両親を亡くしたベッツィーは,父方の大おばさんに引き取られ,大おばさんと大おばさんの娘のフランシスおばさんに大切に大切に育てられてきました。フランシスおばさんは,ベッツィーの困っていることを何でも知っていて,悩みを聞いてくれるのでした。

 ところが,ベッツィーが9歳になったある日のこと,思いもよらないことが起こったのです。大おばさんが重い病気にかかり,ベッツィーの世話ができなくなってしまったのです。

 ベッツィーは,アメリカバーモンド州の田舎に住む母方の親戚に引き取られることになりました。そこには母方の大おばさんと大おじさんと2人の娘であるアンおばさんがいて,犬や猫もいました。

 ベッツィーは,自然豊かな農場で厳しくも温かい家族の中で暮らすうちに,「もしアンおばさんだったら,どうするだろう。」と自分で考え行動し,苦境を乗り切り自立した少女へと成長していきます。

 1917年に出版されて以来,世代を超えて読み継がれてきたアメリカ児童文学の名作です。
 日本では1950年に「ベッチィ物語」(中野好夫・中村妙子訳 評論社 調布市立図書館では所蔵していません。)として翻訳されましたが,長い間絶版となっていました。

 本書は1950年版と訳の雰囲気は違いますが,一人の少女が今までとは違った環境の中で成長し,自分らしさを取り戻していく様子が伝わってきます。
 また,子どもへの真の愛情とは何かを教えてくれます。昔子どもだった大人にもおすすめの1冊です。

児童書おすすめの一冊。小学校低学年以上。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『リンゴの丘のベッツィー』を図書館で探す ■

ボノボ-地球上で,一番ヒトに近いサル-


江口絵理著

そうえん社 2008年 1260円

 みなさんはボノボを知っていますか?ボノボは,地球上で一番ヒトに近いサルと言われている第四の類人猿です。

 ゴリラやオランウータンがヒトにとって親戚だとすると,チンパンジーやボノボは家族といえるくらいヒトに近い存在なのです。

 ボノボは非常に高い知能を持ち,平和をこのむ社会で暮らしています。ボノボはめったにあらそいをおこしません。なぜなら,動物界では唯一無二のケンカ回避術を持つからです。  

 あらそいのおこる場面の多くで,攻撃という手段ではなく,性行動でその状況をおさめます。食べ物をめぐるあらそい,魅力的なメスをめぐるあらそい,敵かもしれない見知らぬ相手に出くわしたとき,日常的にケンカになりそうなときに,ボノボは手近な相手をみつけて性行動をはじめ興奮や緊張をやわらげます。

 この本にはこのようなボノボの不思議な生態や,目を疑うほどの知能の高さ,危機に直面しているアフリカの現状,動物保護の難しさなど多岐にわたる内容が詰まっています。
著者は,「ある動物の目から世界を見たら,まったく新しい価値観が見えてきます。」と言っています。

 人間のうつし鏡ともいわれるボノボを知り,ボノボの視点から世界を見てみませんか。


児童書おすすめの一冊。小学校高学年以上。

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『ボノボ-地球上で,一番ヒトに近いサル-』を図書館で探す ■

グリーンフィンガー-約束の庭-


ポール・メイ作 シャーン・ベイリー絵 横山和江訳
さ・え・ら書房 2009年 1700円


 主人公のケイトは、文字を読んだり書いたりすることが不得意で、そのコンプレックスから学校が好きになれず、問題を起こしてばかりいました。そんなケイトのため、家族はロンドンから田舎町へ引っ越すことにします。ところが引っ越し先は荒れ果てたひどい家でした。ケイトのお父さんが自分で修理をやってみたいという理由で、住むことに決めたのですが、お父さんは大工仕事にまったくの素人で、家の修理はなかなかうまくいきません。このことをきっかけに、両親の口ゲンカが増え始め、お母さんは家計を支えるために、田舎の家を離れ、ロンドンで仕事を続けることにします。

 ケイト自身も田舎暮らしを嫌っていたのですが、ウォルターというおじいさんに出会い、変わりはじめます。ウォルターの畑を手伝ううちに、植物に興味をもち、植物を育てる楽しさを知ります。ある時、自分たちの住む家が、かつてウォルターが暮らしていた家だと気づき、そこに美しい庭が広がっていたことがわかります。「庭がほしい」と言っていたお母さんのために、ケイトは庭の手入れをはじめます。

 少しずつ庭が手入れされ、輝きをとりもどしていく様子、庭の手入れを通じて、ケイトが自分自身を見つめ直し成長していく姿が丁寧に描かれており、先へ先へと読むことができます。

 物語のタイトルになっている「グリーンフィンガー」は、植物を育てることが上手な人をさします。ケイトはグリーンフィンガーになれたのでしょうか。

児童書おすすめの一冊。高学年から

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『グリーンフィンガー-約束の庭-』を図書館で探す ■

エンザロ村のかまど


さくまゆみこ文 沢田としき絵
福音館書店 2009年 1365円


 アフリカの国ケニアの首都のナイロビから車で半日の距離にある「エンザロ村」には,電気も水道もガスもありません。でも,著者が泊めてもらった家の奥さんは,食事の時間になると手早くテーブルの上に,スープやあげパンや炒り卵などの様々なご馳走を並べてくれました。これは,いったいどうしてなのでしょうか。

 その秘密は「エンザロ・ジコ」と呼ばれるかまどにありました。「エンザロ・ジコ」を考え出したのは,岸田袈裟(けさ)さんという日本人の女性で,岸田さんは30年近くケニアの地で,女性や子どもの生活を改善するために働いてきました。

 岸田さんは,ケニアの人たちが本当に必要としているのは何か,自分たちでお金をかけずにつくれるものはないかを村人たちとの話し合いを通して考え,セメントで作った箱に小石や砂を入れて水をこす装置を作りました。そうして「さらに安全な水を」と考えて出てきたアイディアがかまどだったのです。1度に3つの鍋を並べてかけることができ,食事の支度の時間が短縮できただけではなく,沸かした水を飲めるようになり赤ちゃんの死亡率が減ったのです。岸田さんは,今でも「エンザロ・ジコ」の講習会を開き,普及に努めています。

 さて,岩手県遠野市出身の岸田さんがケニアの地で広めたものは,もう一つあるのです。それは,「わらぞうりづくり」です。ケニアでは,はだしの人が沢山います。はだしは,気持ちがいいし,足の裏を丈夫にするという利点もあるのですが,足の裏の傷から菌や寄生虫が入ってしまうことがあります。岸田さんは,「わらぞうりづくり」を初め助産婦さんに教えたのですが,それが小学生の間に広まり,けがで学校を休む子どもが減ったということです。

 私たちの国日本では,お金を出せば何でも手に入ります。でも,日本が手放してしまった「お金をかけずに豊かな暮らしを営んでいく幸せ」を,この本は私たちに教えてくれます。


児童書おすすめの1冊。 高学年から

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『エンザロ村のかまど』を図書館で探す ■

人魚のおくりもの


バーバラ・レオニ・ピカード作 白坂麻衣子訳
長崎出版 2009年 1470円


 漁師の網に人魚がかかりました。人魚は海へもどしてくれるよう漁師に懇願しますが、旅の男に売られ、行く先々の町や村で見世物にされます。
 さてある町に、働くのが嫌いなお人好しの若者がいました。若者は檻に入れられた人魚をかわいそうに思い、近くの川に逃がしてやります。人魚を盗んだ罪で若者は捕まり、しばり首にされることになりますが、いよいよという時に一羽のカモメが飛んできて「人魚さんからの、おくりもの」と叫んで貝殻を落としていきます。小さな貝殻の中からかすかな水と風が流れ出し……。

 表題作「人魚のおくりもの」のほかに、美しく勇敢な騎士が、醜い貴婦人の3つの願いをきくことでこの世で最も美しい妻を見つける「シナノキの貴婦人」や、物忘れがひどくしかられてばかりの少年が、小さなお城を見つけたことで幸運をつかむ「麦畑のお城」など、全部で8編収められています。

 どの作品も昔話や神話を思わせる雰囲気を持ち、物語の世界に引き込まれます。折に触れて何度も読み返したくなるような作品です。


児童書おすすめの1冊。 高学年から

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『人魚のおくりもの』を図書館で探す ■

楽しいスケート遠足


ヒルダ・ファン・ストックム作/絵 ふなとよし子訳
福音館書店 2009年 1365円


 低地の多いオランダは国中に運河や水路がたくさんあり,冬になるとそれがすべて凍ります。そして大人も子どもも凍った運河でスケートをすることを楽しみにしているのです。

 エストル村に住むエベルトとアフケのふたごの兄妹もスケートができる日を心待ちにしていました。そして本格的な冬が到来すると,二人の担任の先生はクラスの子ども16人を連れ,運河を通って初めて訪れる町まで向かう一日がかりのスケート遠足を計画します。

 先生の引っ張ってくれるポールにつかまって滑ったり,氷の上に張られたテントのお店でココアを飲んだりしながら,みんなは楽しいひとときを過ごしますが,途中エベルトは魚釣り用の穴に落ちておぼれそうになってしまいます。

 びしょぬれになったエベルトは,近くの農家にお世話になりますが,そこではエベルトだけでなくクラスのみんなが雪入りのパンケーキをご馳走になるなどの温かいもてなしを受けます。その後も楽しい出来事や,少しはらはらする出来事が次々に起こります。さて無事に遠足を終えることができたのでしょうか?

 読後は,登場人物とともに遠足に行ってきたような満足感が得られます。ふたごを中心に子どもたちの姿が生き生きと描かれていることで,遠足の一日を追っただけでない厚みのある豊かな物語になっています。背景となるオランダの風物も魅力的で,作者本人により描かれた絵も大変美しく一読をおすすめしたい本です。

児童書おすすめの1冊。小学校中学年向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『楽しいスケート遠足』を図書館で探す ■

氷の上のボーツマン


ベンノー・プルードラ作 上田真而子訳 ヴェルナー・クレムケ絵
岩波書店 2009年 1470円


 舞台は流氷がただよう冬の港です。凍てつく寒さが続き,雪がどっさり降ったある日,3人の子どもたちが,船長さんと船で暮らしている子犬のボーツマンと遊ぼうとやって来ました。一番大きい7歳のウーヴェ,暴れ者でお調子者の6歳のヨッヘン,まだ小さい5歳の女の子カトリンです。3人はボーツマンを連れ出して,入り江にできた氷の原っぱへ遊びにいきます。

 氷の原っぱは鏡のようで,そこには静まりかえった世界が広がっていました。その先には真っ黒な海があるばかりです。ウーヴェが止めるのも聞かず,ヨッヘンと子犬のボーツマンは水際の氷の上で踊りだします。すると突然氷が割れて,ヨッヘンと子犬のボーツマンの乗った氷が切り離されてしまいます。

 ヨッヘンはジャンプをしてなんとか氷の原っぱに戻ってきましたが,子犬のボーツマンは氷の上に取り残されてしまい,ボーツマンを乗せた氷の塊はどんどん流されていきます。ウーヴェはなんとかボーツマンを助けようとしますが,ヨッヘンは恐くなって逃げ出してしまい…。はたしてボーツマンは無事に陸地に戻って来られるのでしょうか?

 この物語は1959年に旧東ドイツで出版され,2009年に初めて日本で翻訳・出版がされました。挿絵は黒と赤の二色刷りの版画で,独特の雰囲気がある素晴らしいものになっています。半世紀もの時を経て日本に紹介された,とても趣のある作品です。

児童書おすすめの1冊 小学校中学年向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『氷の上のボーツマン』を図書館で探す ■

ラーシアのみずくみ


安井清子文 砂山恵美子絵
こぐま社 2009年 1365円


 主人公は,ラオスの山の村に住むラーシアという3歳の男の子です。村には水道がないので、毎日水場に水を汲みに行かなくてはなりません。ラーシアの家では,水汲みはお姉ちゃんのヌンの仕事でした。

 ある日,ヌンが水汲みに行こうとすると「ぼくもみずくみにいく!」とラーシアは言いました。お母さんがまだ小さいからラーシアには無理だと止めるのですが,ラーシアはお姉ちゃんを追いかけます。ラーシアは犬やガチョウ,こぶたたちに「ぼく,みずくみにいくんだよ」と自慢しながら水場へと向かいます。

 水場で水を汲み終わると,ヌンはポットを一つ,ラーシアに渡します。ラーシアはポットを持ってヌンの後を歩きますが,すぐに重くなってしまいます。

 すると,そこには先ほど会ったこぶたたちが…。ラーシアはこぶたたちに水を地面にこぼして飲ませてやります。その後も犬やガチョウに水を飲ませてやったため,家に着く頃にはコップ3杯分の水が残っているだけ…。それでもお母さんはお手伝いができたラーシアを褒めてやり,ラーシアとヌンとお母さんは3人でその水を飲みました。

 日本の子どもたちも,背伸びをして頑張るラーシアに共感できるのではないでしょうか。人の役に立ちたいと張り切るラーシアと,それを褒めてやるお母さんの様子はほほえましく,あたたかい気持ちになれる作品です。

児童書おすすめの1冊 小学校低学年向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『ラーシアのみずくみ』を図書館で探す ■

世の中への扉 野生動物のお医者さん


齊藤 慶輔 著
講談社 2009年 1155円


 午後4時,北海道にある「釧路湿原野生生物保護センター」に「動けなくなっているオジロワシが発見された」との連絡が入りました。センターの獣医師である齊藤先生は,オレンジ色に染まる釧路湿原を車で出発して,2時間以上走り続けオジロワシを保護してくれている動物病院に到着しました。帰りも長時間の道のりです。途中の駐車場で車を止め,ワシのショックと脱水症状をやわらげるため注射を2本打ちました。センターに着くと休む間もなく早速治療開始です。オジロワシは重体でしたが,次の日には目を開き,その後肉の塊を差し出せば夢中で飲み込むまでに回復しました。

 「野生動物をどう治すか」これには教科書もお手本もありません。では,どうしたらよいか。齊藤先生は,野生の鳥の自然な状態をよく知っていると,目の前の鳥が今どういう状態にあるのかがよく分かると述べています。

 健康な鳥は体を冷やさないように片脚立ちをしています。ですから目の前の鳥が長時間立つ脚を代えていなかったら,上げているほうの脚を動かせないような痛みを抱えている可能性があるというのです。また,野生動物用の医療機器はありませんから,集中治療室には赤ちゃん用の保育器を置いて治療にあたっています。

 野生動物のお医者さんは,病気を治して終わりというわけにはいきません。何故なら,元気になった鳥を「野生復帰」させなくてはならないからです。でも,すべての鳥を野に帰せるわけではありません。その時はどうするか。この本は私たちが知らない,いろいろなことを教えてくれます。

 幼少期をフランスで過ごした齊藤先生がどうして野生動物のお医者さんになったか,自分の仕事を理解してもらうためにどういう努力をしてきたのか・・・映画「ウルルの森の物語」のモデルとなった齊藤先生の魅力が伝わってくる1冊です。


児童書おすすめの1冊 小学校高学年向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『世の中への扉 野生動物のお医者さん』を図書館で探す ■

びんの悪魔


R.L.スティーブンソン著 よしだみどり訳
福音館書店 2010年 1050円


 『宝島』『ジキル博士とハイド氏』などで知られる、R.L.スティーブンソンの新たな邦訳作品が出版されました。不思議なびんをめぐる物語です。

 死ぬ前に必ず売ること、そして、買値より安く売ること。この二つの条件で売買される「何でも望みのかなうびん」を手にした男ケアウエ。

 あるときは自らの物欲を満たすため、またあるときは愛する人を守るため、彼はびんを買うことや手放すことに奔走します。

 最後にびんを手元に残し、「永遠の地獄の炎に焼かれる」という苦行を負うのは誰なのか?人生をかけた「ババ抜き」の結末は、読んでのお楽しみです。


児童書 おすすめの1冊 高学年向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『びんの悪魔』を図書館で探す ■

りこうすぎた王子


アンドリュー・ラング 著 福本 友美子 訳
岩波書店 2010年 672円


 パントウフリア国の三人の王子のうち、いちばん上のプリジオは、洗礼式のお祝いにきた年よりの妖精の呪いのせいで、りこうすぎたために、国中の人から嫌われていました。そんなプリジオ王子が、やさしくて美しいロザリンドに出会ってからはすっかり変わり、ロザリンドのために、ファイアードレイクという火をふく竜を退治することになります。王子が考えついた竜退治の方法とは…。

 「青の童話集」など色の名前の付いた童話集で知られるイギリスの文学者・民俗学者ラングによる創作童話。途方もないスケールの王子の竜退治とともに、王子を助ける「千里ぐつ」「かくれぼうし」「まほうのじゅうたん」といった魔法の道具の数々も、読み手を夢中にさせます。ロバート・ローソンによる挿絵も魅力的です。

 本書は、1951年に岩波少年文庫の1冊として、光吉夏弥訳、塩田英二郎の挿絵で出版され、長い間親しまれてきましたが、その後、入手できない期間を経て、今年、訳・挿絵を新たにして刊行されたものです。

児童書 おすすめの1冊 高学年向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『りこうすぎた王子』を図書館で探す ■

『図書館ラクダがやってくる ―子どもたちに本をとどける世界の活動―』


マーグリート・ルアーズ著 斉藤規訳
 さ・え・ら書房 2010年 1400円

図書館と言えば,建物を指すように思われがちですが,この本では,あちこちへ移動して,子どもたちに本を届ける活動をしている様々な国の様子を紹介しています。
日本でよく知られている,バスを使った移動図書館だけではありません。題名にあるようにラクダが本を運ぶ国ケニアや,ゾウが丸太や穀物を運ぶように本を届ける国タイ。ペルーではロバの引く荷車に子どもたちが鈴なりになって,届けられた本を読んでいる姿を見ることができます。

 著者は,はじめ新聞で「ケニアの人里はなれた砂漠の村に住む子どもたちへ本を運ぶラクダがいる」という記事を読みました。そして,世界のほかの地域では,どんな方法で子どもたちに本を届けているのかと考え,世界中の図書館員に手紙を出し,図書館の話を聞かせてほしいと頼んだそうです。そして世界各地から,届けられた写真の数々は,様々な移動図書館と本を受け取って嬉しそうな顔の子どもたちでいっぱいだったのです。

 日本の子どもたちにとって馴染みのない国アゼルバイジャンから,図書館の先進国イングランドまで,どこの国にも,本に情熱を傾け,人生において図書館がいかに重要かを理解している人々がいます。図書館があることを当たり前に思っている読者の子どもたちに,たくさんの本を自由に読めることの幸せを教えてくれる1冊です。

児童書 おすすめの1冊 高学年から

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『図書館ラクダがやってくる ―子どもたちに本をとどける世界の活動―』を図書館で探す ■

『子どもに語るイギリスの昔話』


松岡享子編・訳
 こぐま社 2010年 1600円

 若い学生と接する機会があり,「みなさんは昔話といえば,どんな昔話が頭に浮かびますか?」と聞いたところ,「ももたろう」「いっすんぼうし」「こぶとり」と,答えてくれたのはほんのいくつかだけ。

 昔話をきいたことがないのだろうか?また不思議に思ったのは,どれも日本の昔話ばかりで,外国の昔話がひとつも出てこなかったことです。せめて,イギリスの昔話の「三びきのクマの話」「三びきの子ブタ」「ジャックとマメの木」などをあげてほしかった。生活様式,服装などは洋風化されている若者たちなのに,精神,心の中などは日本的なものに,どっぷりと浸かっていることがわかり,少し驚きを感じました。

 今から120年前,民間伝承の研究者として,昔話の収集や研究に携わっていたジョセフ・ジェイコブという人が,1冊のイギリスの昔話集を出版しました。この本は好評で,数年後に第2集が出て全部で87の話が収められています。その中から16篇を厳選して収録したのが本書です。

 運をさがしに出かけたジャックが,ネコ,犬,ヤギと,次々に出会って仲間を増やし,全員の活躍で泥棒をやっつけ幸運を手にする「ジャックの運さがし」,若くて,美しくて,お金持ちで,おまけに,右の腕が金でできている女の人と結婚した男が,妻の死後,妻の金の腕を手に入れようする「金の腕」など,大男や幽霊が登場する怖いお話,おろかでも憎めない人々の物語です。

 本書を編集し訳された松岡享子氏は『くまのパディントン』シリーズ,『しろいうさぎとくろいうさぎ』(いずれも福音館書店発行)の訳者,『なぞなぞのすきな女の子』(学習研究社)の作者,児童文学の研究などで著名な方です。また,スト-リーテラーとしても日本における先駆者です。その松岡氏が携わった本なので,読み聞かせはもちろんのこと,語りのテキストとしても最適です。どうぞ,目で読むだけではなく,声に出して読んでみてはいかかでしょうか。

 今回紹介した本以外にも,シリーズとして,グリム,日本,アイルランド,トルコ,北欧,イタリア,モンゴル,ロシア,中国,などがありますので,お話で世界一周を楽しむことができます。

児童書おすすめの一冊。小学校中学年以上向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『子どもに語るイギリスの昔話』を図書館で探す ■

『青矢号―おもちゃの夜行列車』


ロダーリ作 関口英子訳 岩波書店
 2010年 680円


 イタリアでは,1月6日の前夜に魔女のベファーナが子どもたちにプレゼントを配るのですが,ベファーナはおもちゃの代金を払った家にしかプレゼントを配りません。

 ある日,フランチェスコという名前の少年がベファーナのおもちゃの店を訪れて,プレゼントに電気機関車が欲しいといいますが,フランチェスコの家は貧しくてお金を払うことができず,泣く泣くあきらめます。フランチェスコが店のショーウインドーに飾ってある電気機関車の青矢号を毎日ながめにくるうちに,おもちゃたちはだんだんフランチェスコを好きになっていきます。そして1月6日の前日,おもちゃたちは自らフランチェスコの家に行こうと決め,ベファーナの店を抜け出しますが…。

 1月6日はカトリック教の公現祭(エピファニー)というお祭りで,魔女ベファーナがホウキに乗って子どもたちにプレゼントを持ってきてくれるというイタリアの伝統が物語の下地になっています。青矢号に乗ったおもちゃたちは外の世界に出て行きますが,危険なこともいっぱいの大冒険です。おまけにフランチェスコにもとんだ災難が待ち受けていて,ハラハラドキドキしながら読み進められます。青矢号の駅長,将軍,銀バネ大将,コインという犬などたくさん出てくるおもちゃたちも個性的でかわいらしく,心温まる作品です。

児童書おすすめの1冊。小学校高学年から

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『青矢号―おもちゃの夜行列車』を図書館で探す ■

『土曜日はお楽しみ』


エリザベス・エンライト作 谷口由美子訳 岩波書店
 2010年 720円


 『指ぬきの夏』で知られるエリザベス・エンライトの新たな翻訳作品が出版されました。物語の舞台は,1940年代初めのニューヨークです。

 雨の降る憂鬱な土曜日,メレンディ家の4人兄弟は,次女ランディの発案でぼうけんクラブを結成しました。このクラブでは毎週土曜日に,1週間分のみんなのおこづかいを持って,1人ずつ冒険に出かけます。

 お父さんの,「これからもずっと,やったことをおぼえていられるようなことをしなさい。」という言葉通り,4人はそれぞれ,知恵をしぼってその子ならではの冒険をします。行き先は美術館やオペラ劇場,美容室・・・。大変身して家族に眉をひそめられたり,迷子になってしまったり,不注意で火事を起こしてしまったりと,失敗もありますが,そうしたことが忘れられない冒険の思い出となり,4人の魅力にもなっています。また,子どもたちを取り巻く大人たちも,それぞれにその人らしい味わいがあり,物語をよりいっそう豊かなものにしています。

 著者自身による挿絵とともに,心弾む冒険をお楽しみください。

児童書おすすめの1冊。小学校高学年から

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『土曜日はお楽しみ』を図書館で探す ■

『モーツァルトはおことわり』


マイケル・モーパーゴ作 さくまゆみこ訳 岩崎書店
 2010年 1400円


 「モーツァルトの件についての質問だけはしない約束よ。」

 これが,先輩に代わって世界一有名なバイオリニスト,パオロ・レヴィにインタビューすることになった新米記者レスリーが言い渡されたことでした。しかし,その理由がわからないままインタビュー当日を迎えたレスリーは,緊張と不安のあまり,モーツァルトの質問はだめだと言われたことを,レヴィ氏本人に伝えてしまいます。その上,許可されたたった一つの質問で,彼がバイオリンを弾き始めたきっかけを尋ねてしまいました。プライベートな質問もしないようにと,先輩から注意されていたというのに…。

 これでは「出て行け!」と怒鳴られてもしかたないと,レスリーは覚悟しました。しかし,レヴィ氏はしばらく黙った後に,勇気をふりしぼるようにして,ある一つの物語を語り始めます。その物語は,かつてナチスの強制収容所で起きた悲惨な出来事の記憶と繋がっていたのです。

 第二次世界大戦中,何百万人というユダヤ人が強制収容所で命を落としました。また,奇跡的に助かった人々の心にも,深い傷跡が残りました。彼らはその後の人生をどのような気持ちで,何を考え生きたのか。この物語は,そんな想像から生まれたものだと著者は語っています。

 青を基調とする優しい色彩の絵がそえられた,イタリアのヴェニスを舞台に語られる物語。人と音楽の持つ力が強く伝わってくる1冊です。

児童書おすすめの1冊。小学校高学年から

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『モーツァルトはおことわり』を図書館で探す ■

哲夫の春休み


斎藤惇夫作 岩波書店  2010年 2500円
 中学入学を控えた4月2日、哲夫は祖母に見送られ浦和の家を出て駅に向かいました。これから、父の故郷、新潟県長岡へ向けての初めての一人旅が始まるのです。長岡へは、父のすすめで新幹線に乗らずに特急や各駅停車の電車を乗り継いで行きます。

 「どうして?新幹線があるのに?」と思っていた哲夫でしたが、上越線の車窓から見える風景に目を奪われたり、また、車内の風景が急に一変するという不思議な体験をするうちに少しずつ気持ちが変わっていきます。そうして、長岡に着いた哲夫を待っていたのは、父や祖母が昔住んでいた大きな古い屋敷でした。今は取り壊されてしまったはずなのに・・・。古い屋敷に足を踏み入れた哲夫は、小さい頃の父とおしゃべりをし、哲夫が生まれる前に亡くなった曽祖母に昔話を語ってもらい、誰にも話せなかった悩みを打ち明け、新たな一歩を踏み出すことができたのでした。

 子どもの頃の両親に出会い、一緒に遊ぶことができたらどんなに楽しいことでしょう。また、出会ったことのない曽祖父や曽祖母と話ができたら素敵です。この本はそんな願いをかなえてくれます。春の一日、哲夫と一緒に過去への旅を楽しんでみませんか。

児童書 おすすめの1冊 小学校高学年から

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『哲夫の春休み』を図書館で探す ■

『ほこりまみれの兄弟』


ローズマリー・サトクリフ著 乾侑美子訳 評論社 
2010年 1700円


 孤児の少年ヒューは意地悪なおばさんに厄介者扱いされ、辛い毎日を過ごしていました。
ある日おばさんが愛犬アルゴスの頭を殴って殺してやると言ったとき、ヒューはアルゴスとツルニチニチソウの鉢植えを持って家を出ました。ツルニチニチソウはとても小さかったたときに死んだお母さんの大好きな花だったのです。

ヒューのお父さんは牧師でしたがヒューが8歳のときに亡くなりました。お父さんはヘリティジという人の給費生としてオックスフォードで学んでいました。給費生というのは裕福な友人と一緒に暮らし、同じ教育を受け同じものを食べる代わりに、その友人の書生のようなことをするのです。お父さんは学んだ日々のすべてを話し、ヒューにも同じ道を進むように勧めていました。

オックスフォードを目指したヒューが空腹で倒れそうになったとき、親切な旅の一座が彼を助けてくれました。彼らはヒューを「ほこりまみれの兄弟」と呼びかけて優しくしてくれ,ヒューはこの一座の仲間となって、彼らと旅をともにします。

行く先々でひもじい思いをしたり、わくわくしたり,失敗して親方に鞭打たれたり、アルゴスを失いかけたりと多くの経験をして、幼いながら一人の人間として自立して生きていく方法を身につけていきます。そしてある日,ヘリティジ氏が現れて,息子の給費生にならないかと誘ってくれます。ヒューはそれを一旦断りますが・・・。

イギリスの優れた児童文学者サトクリフの若い頃の作品です。一座が巡るイングランド各地の歴史的出来事や人物、森の木々や花々,野生の生き物が豊かに描写されていて魅力的です。少年ヒューの成長とヒューに心を寄せる身近な大人たちがすばらしく,暖かい愛情にあふれた家族との出会いが最後に描かれ、満足できる結末となっています。

児童書 おすすめの1冊 小学校高学年から

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『ほこりまみれの兄弟』を図書館で探す ■

竜の座卓


朝比奈蓉子作 金沢まりこ絵 偕成社 
2011年 1200円


 以前このブログで『たたみの部屋の写真展』を紹介したことがありますが,今回紹介する本は同著者による第二弾です。

 主人公のかけるとバイク好きのてつ兄,そして両親。大森家に脳梗塞で倒れたじいちゃんが同居することになります。じいちゃんのリハビリも兼ねて,座卓を作ることになりますが,病気で思うように手が使えないじいちゃん,不器用なてつ兄。じいちゃんの指導のもとで夏休みを使い,風呂おけいっぱいくらいの汗をかき,みんなで力を合わせて座卓を完成させます。大森家の台所には大きな座卓が置かれ,かけるたち兄弟にとっては大切なものになります。しかし、おじいちゃんが亡くなると,その場所には新しいイスとテーブルが置かれていました。

 てつ兄は反抗して,てらてらしたテーブルなんかで,ぜったいに飯は食わんと抗議をします。その後,兄弟の思いが詰まった座卓は見つかりますが・・・。死を間近にひかえた祖父と,兄弟のふれあいがストレートに伝わってくる作品です。座卓には兄弟にむけたじいちゃんの強い思いが刻まれており,読後温かい気持ちにさせてくれます。特に一見やんちゃですが,じいちゃんや弟を思いやるてつ兄の個性が光ります。

 『たたみの部屋の写真展』では認知症のおばあさん,『竜の座卓』では脳梗塞のおじいさん,第三弾目ではどんな人物が登場するのでしょうか。今から楽しみです。

児童書 おすすめの1冊 小学校高学年から

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『竜の座卓』を図書館で探す ■

丘はうたう 改訂


マインダート・ディヤング作 モーリス・センダック絵 脇明子訳

福音館書店 2011年 1500円


 1981年に出版され,その後絶版となっていた『丘はうたう』が,改訂,復刊されました。

 3人兄弟の末っ子のレイは,家族と一緒にトウモロコシ畑がどこまでも続くアメリカの田舎に引っ越してきました。姉のシャーリーと兄のマーティンは学校に通い,毎日学校へ行く道すがら,トウモロコシ畑の中でインディアンごっこをしたり,小川で空き缶の船を浮かべたりして遊びますが,まだ学校へ通っていないレイは,昼間はトウモロコシ畑でひとり遊びをしてすごしていました。

 そんなある日,レイはトウモロコシ畑の中でトラクターのわだちを見つけます。わだちの先は丘の上へと続き,その丘のてっぺんは柵にぐるりと囲われ,柵の中には1頭の大きくて白い馬がいました。はじめは馬を怖がっていたレイですが,お腹をすかせている様子の馬に持っていた棒つきキャンディーやりんごをやり,それから毎日馬に食べ物をやりに行くようになります。それはレイだけの秘密になるのですが…。

 広大な景色が広がるアメリカの農場を舞台に,子どもたちの冒険がみずみずしく描かれています。『かいじゅうたちのいるところ』の作者モーリス・センダックによる繊細な挿絵も物語の世界を更に広げてくれます。子ども時代の気持ちを失わず,何よりも子どもの気持ちを大切にしてくれる両親の存在が魅力的で,いつまでも忘れられない一冊になることでしょう。

児童書 おすすめの1冊 小学校高学年から

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『丘はうたう 改訂』を図書館で探す ■

ミンのあたらしい名前


ジーン・リトル著 田中奈津子訳 講談社

2011年 1400円


 赤ん坊のころ親に捨てられた少女ミンは,大人を信用できず,心を閉ざしていました。そのため,里親とうまくいかず,四度目の里親にも手放されそうになります。そのとき,小児科医のジェスがその場に居合わせてミンを連れ帰り,一緒に暮らし始めます。以前,肺炎で入院した夜,そっと寄り添ってくれたジェスに,ミンは他の大人とは違うものを感じていました。自身も里子であり里親の経験もあるジェスは,感情を表さないミンの心情を察し,全てを受け入れてくれるのでした。

 クリスマスが近づき,二人はクリスマスツリーにする木を切りに出かけます。そこで,ミンは瀕死の子犬を助けます。その子犬が「子犬工場」から逃げてきたのではないかと聞き,ジェスの名づけ子トビーとともに,「子犬工場」の実態を探る計画を立てるのですが…。

 朝起きると食事の準備が整っていること,家の合鍵を持つこと,クリスマスにプレゼントを選ぶこと,そんなささやかな出来事を,ミンはジェスとの暮らしの中で初めて経験します。そして,戸惑いながらも,自分の心が徐々に開いていくのを感じます。心を閉ざし,人との距離を置くことで自分の心を守ってきたミンが,安らげる場所と友人を得て,過去を受入れ,新たな一歩を踏み出す物語で感動的な作品です

児童書 おすすめの1冊 小学校高学年から

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『ミンのあたらしい名前』を図書館で探す ■

山のトムさん-ほか一篇-


石井桃子作 福音館書店

2011年 700円


 戦後間もなくのこと,北国のある山あいに,開墾者として移り住んだ家族がありました。小学生のトシちゃんと,トシちゃんのお母さんと,お母さんの友達のハナおばさんと,おばさんの甥のアキラさんの4人です。

 山の開墾者たちは,ネズミに頭を悩ませていました。というのも山の家にはたくさんのネズミがいて,夜昼構わず家じゅうを駆け回るだけでなく,人が寝ていればその鼻をかじるし,配給のお米も,地面にまいた作物の種も,本も,戸棚も,着物も,グローブも,おひなさまも,何でもかんでも食い荒らしてしまったからです。

 ネズミとりもいろいろと試してみましたが,どれも効果がありません。そこでもらわれてきたのが,子ネコのトムでした。

 えものとりの訓練のためにカエルをとってやってみせていたら,自分ではとらずに「ミャーオー!ミャーオー!」と鳴きたて,「とってくれよう!」とせがむようになってしまったり,お腹の病気にかかって散々な目にあったり,おばさんにくっついて町までやってきたものの,怖くなって逃げ出してしまったり……。トムが引き起こす騒動や武勇伝のおかげで,一家には笑いが絶えません。

 著者自身の開墾生活を元に,子ネコのトムが成長し,かけがえのない家族の一員となるまでの出来事を丁寧に描いた作品です。

 1968年に単行本として出版された『山のトムさん』に,同じ一家の登場する「パチンコ玉のテボちゃん」を加えて文庫化されました。

児童書 おすすめの1冊 小学校高学年から

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『山のトムさん』を図書館で探す ■

ハスの花の精リアン


チェン・ジャンホン作・絵 平岡敦訳 徳間書店

2011年 1800円


 むかし,ローおじさんという漁師が,湖の小さな木の舟にひとりで住んでいました。
 ある日,見知らぬおばあさんの頼みをきいたローおじさんは,お礼に種をもらいます。それを湖の浅瀬に植えると,たちまち芽が出て,葉が広がり,大きなハスの花が咲きました。
 その晩,ハスのつぼみからリアンという小さな女の子が現れます。リアンが持っていたハスで触れると,ローおじさんの舟も服もりっぱになり,おいしいごちそうまで出てくるのです。それからというもの,リアンは毎日日暮れどきになるとハスの花から出てきて,おじさんの生活を助けてくれました。
 ところが,欲張りな王さまの娘タンがその噂を聞きつけ,リアンをつかまえるためにローおじさんを牢屋に入れてしまいます。リアンはおじさんを助けるため,ひとりでお城にかけつけますが…

 「むかし,あるところに」で始まり,ハスの花から現れた小さな女の子が活躍する不思議な物語は,昔話を思わせます。ひとりぼっちだったローおじさんと小さなリアンとの絆がほほえましく,読後は心があたたかくなる一冊です。

 作者のチャン・ジャンホン氏は中国出身でパリに移住して活躍している画家です。ほかに『ウェン王子とトラ』『この世でいちばんすばらしい馬』(どちらも徳間書店)があります。どの作品も中国の伝統的水墨画の手法を用いており,大きな画面いっぱいに描かれた絵には迫力があります。

児童書おすすめの一冊。小学校低学年向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

■ 『ハスの花の精リアン』を図書館で探す ■

タイムカプセルを開こう


池田敏秀作著

2011年 1470円


小6の将也は、優しいけれど、どこか気弱で友達からからかわれていました。そんな将也の家に古い鍋とひしゃくが届けられます。差出人は田宮金物店。

将也の祖父、俊さんは、それらを見て、自分の子どもの頃を思い出します。50年前、俊さんの家の離れに、いかけやを営む田宮一家が住んでおり、娘の加代子とは同級生でした。ガキ大将だった俊さんは足の悪い加代子と運動会で二人三脚のペアを組む予定でしたが、加代子は、運動会を目前に引っ越していってしまいました。届けられた鍋とひしゃくは、加代子がずっと大切に持っていたものでした。
事情を知った将也は、俊さんが50年前に隠した二人三脚用の布ひもを見つけるため、普段は決して怖くて近づかない、火の見やぐらに登ることを決めます。

俊さん達の50年越しの思いが遂げられる結末は、心が温まります。将也が祖父たちの姿に励まされ、少しずつ、強く成長していく様子に、共感できる読者も多いのではないでしょうか。読後、とてもさわやかな気分になれる1冊です。

児童書おすすめの一冊。中学生向き

■ 『タイムカプセルを開こう』を図書館で探す ■