中・高生向一覧

「ミシシッピがくれたもの」


リチャード・ペック著 斉藤倫子訳 東京創元社 2006 1700円

15歳のときにぼくは初めて父の故郷を訪れた。
歴史と謎の重さが宿る家に,祖父母と大叔父,大叔母が住んでいた。
ぼくは,祖母が語る少女時代の思い出に引き込まれる。
それは時代の波に翻弄されながらもたくましく生きる祖父母たちの姿だった…

時代は南北戦争のはじめの頃,イリノイ州の田舎町で暮らす若者たちが,戦争や人種差別を背景に,誇りを失わず潔く生きる姿が感動的な物語。
結末で明かされる運命の不思議さがさらに感慨深い。

児童書新刊のおすすめの一冊。中学生から一般向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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天山(てんざん)の巫女(みこ)ソニン 一黄金の燕


菅野雪虫 著 講談社 2006 1400円


生後まもなく,巫女(みこ)に見こまれ天山(てんざん)につれていかれたソニン。
しかし12年間の修行の後,巫女としての素質がないと里に帰されてしまう。
家族との温かい生活に戻ったのもつかのま,今度は思いがけない役割を担ってお城に召されることとなった。
しかしソニンはそこで大きな陰謀(いんぼう)に巻き込まれていく・・・。

朝鮮半島の古代を連想させる時代背景,王が国を統治し,巫女の力があがめられる世界でくりひろげられる12歳の落ちこぼれ巫女ソニンの物語。

天山で育ったソニンの感性は独特であり,明るく前向きな姿はつい応援したくなる。
脇を固める登場人物も魅力的。
さらに登場人物に負けないストーリー展開,これらが重なり読む人の心をひきつける。

児童書おすすめの一冊。中学生向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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アイ・アム・デビッド


アネ・ホルム 作、 雨海弘美 訳

角川書店 2005年


   12歳の少年デビッドは天涯孤独。両親も国籍も知らず強制労働収容所の囚人として、暮らしていました。ある夜、看守がコンパスを渡し、「北へ行け。デンマークにつくまでひたすら北を目指して歩け」となかば強制的に逃亡させる。

 なぜデンマークなのか分からぬまま、追手の影に怯えながら、自由を求めて旅するうちに、少しずつ自己を尊重し、同時に他人を受け入れる術を学ぶ。働いてお金を稼ぐことも覚え、逆境にありながら、暴力や悪を憎む潔癖な少年となりました。又、旅の途中で少女を助け、淡い恋も知り、ほほ笑みの意味も知ります。

 アイ・アム・デビッドは小さな主人公の真摯で不器用な冒険小説です。

 看守がなぜデビッドを逃亡させたか、なぜ目的地がデンマークなのか、謎解きの要素もスリリング。テーマは政治、宗教、愛そして美など盛りだくさんで、大人も子どもも考えさせられつつ、楽しんで読めるすばらしい作品です。

             柏読書会           桐谷 綾子

読書会おすすめの一冊。

紹介:アカデミー愛とぴあ

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リボン


草野 たき作

ポプラ社 2007年 1300円

 主人公亜樹(あき)の中学2年の終わりから卒業までの1年間を描く。
亜樹が所属している卓球部には,純粋に卓球がしたくて入部してきた子と,帰り道が一緒になるサッカー部や野球部の男子と仲良くなって「彼氏持ち」になるのが目的で入部してきた子がいる。亜樹は卓球をやりたくて入った組だが,一緒にダブルスを組む美佳ら「彼氏持ち」が目的のメンバーともうまく調子を合わせてきた。

 しかし,美佳にダブルスのコンビを解消され,中学最後の試合もいいところがひとつもないままに終わってしまった。自分の押さえていた思いを,物静かな友人の藤本さんに吐き出したことから,気持ちを素直に表現することの大切さを知っていく…。

 部活も家族も友だちも「波風を立てないこと」をモットーに生きてきた亜樹が,さまざまな問題に突き当たりながら,すこしづつ成長していく姿がリアルに描かれている。受験の朝,好意を抱いていた男子に告白をする結末もさわやかな感動を呼ぶ。

児童書おすすめの一冊。小学校高学年から中学生向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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ブタとサツマイモ-自然のなかに生きるしくみ-


梅崎昌裕著

小峰書店 2007年 1500円

日本人にとって、イモとブタは、たくさんある食べ物のひとつに過ぎません。ところが、南太平洋の国・パプアニューギニアでは、イモとブタは暮らしや社会が成り立つための鍵なのです。ブタは、最高のごちそうであるとともにペットでもあり、狩猟の対象にもなります。また、主食であるサツマイモには数十の品種があり、右手と左手にちがう味のサツマイモを持って、ごはんとおかずにして食べたりします。

人類生態学の研究者である著者が、パプアニューギニアの村に滞在し、自然のなかで自給自足の生活をする人びとから学んだ「人間の生きる根源のしくみ」を問いかける本です。

児童書おすすめの一冊。小学校高学年から中学生向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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コウノトリがおしえてくれた


池田啓著

フレーベル館 2007年 1680円

 コウノトリが翼を広げて大空を飛ぶ姿が表紙をかざります。

 コウノトリは大正の終わりに国の天然記念物に指定されてから、昭和の初めにかけて但馬地方で幸せに暮らしてきました。しかし、田んぼに毒性の農薬がまかれ、水銀に汚染された食べ物を食べたコウノトリはどんどん数を減らし、昭和46年には完全に野生から姿を消してしまいました。

 最後のコウノトリの生息地となった兵庫県豊岡市で、もういちどコウノトリを豊岡の空に復活させるための活動がはじまりました。2005年9月24日に、「兵庫県立コウノトリの郷公園」で5羽のコウノトリが放鳥されました。豊岡市の大空にコウノトリが舞う姿が見られたのは34年ぶりのことでした。

 この本は郷公園と豊岡の人びとの50年間の活動の記録です。人間と生きものが共生していくことの大変さと喜びその両方を伝えてくれます。

 いま世界中でさまざまな生きものが絶滅の危機に追いこまれています。人間であるわたしたちは何をするべきなのか。コウノトリたちがおしえてくれています。

児童書おすすめの一冊。小学校高学年から中学生向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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ホーミニ・リッジ学校の奇跡!


リチャード・ペック著 斎藤倫子訳

東京創元社 2008年 1890円

 20世紀初めのアメリカ,インディアナ州の農村を舞台にした物語です。

 15歳の主人公ラッセルは弟のロイドとともに学校が大嫌い。汽車に乗って現われた最新型の脱穀機を眺めては,勉強よりも一日も早く出稼ぎに行って小麦畑で働き,収穫や脱穀することを夢見ています。

 夏休みが終わりに近づいたある日,独身の女性教師が突然亡くなってしまい,代理教師としてやってきたのは,ラッセルの姉タンジー。高校生ながら教育熱心な教師で,生徒たちひとりひとりの頭の中にすき間を作らせないよう,知識を詰め込んでいきます。

 生徒が8人だけの小さな教室で,意欲的な教師のタンジーと,学校から逃げ出そうと企むラッセルたちの愉快で騒々しい学校生活が,美しい自然を背景にいきいきと描かれています。

 タンジーをめぐる3人の男性の恋の駆け引きや,個性あふれる大人たちの存在など古きよき時代のユーモアあふれる,そしてほろっと感動させる物語です。

中学生向きのお勧めの一冊です。

児童書おすすめの一冊。中学生向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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うちの一階には鬼がいる!


ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著 原島文世訳 東京創元社

2007年 2100円

 英国を舞台にした、ユーモラスなファンタジー小説です。

 主人公は、キャスパー、ジョニー、グウィニーの三兄妹。一ヶ月前に母親が再婚したのですが、新しい父親のジャック・マッキンタイアは、横暴で子ども嫌いの「鬼」のような人物。おまけにジャックの連れ子のダグラスとマルコムもいやなやつで、同居生活は人生で最低の日々でした。

 そんなある日、「鬼」がジョニーとマルコムに化学実験セットをプレゼントします。箱の外側には「魔法生成化学/魔術舎製造 毒性・爆発性なし」と記してありました。

 中には、粉末揚素、虹化剤、動物精、竜牙塩などなど、見たこともない薬品がつまっていて、実験を始めてみると、とんでもないことばかり起きるのです。空を飛べる薬ができたり、おもちゃやお菓子が生き物のように動きだしたり…。

 次から次へと起きる奇想天外な事件に、マッキンタイア家の人々は振り回されますが、トラブルを解決するために協力していくことで、バラバラだった家族が一つになっていきます。

 バラエティ豊かに登場する魔法は楽しく、家族の問題まで一気に解決してしまう、テンポのよい物語に引き込まれます。

児童書おすすめの一冊。中学生向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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ほとばしる夏


J.L.コンリー作 尾﨑愛子訳 今村麻香画

福音館書店 2008年 1800円

  早瀬にむかってカヌーをこぎだす姉と弟,川岸には瀕死の重症を負った「森林官」が倒れている。助けを求めて急流を下る二人は無事に役割を果たせるのだろうか・・・。

  冒頭の出だしからストーリーに引き込まれるが,やがて姉弟の状況が丁寧に語られていく。

  夢を追いもとめる父が家出した後,残された家族-母と13歳の姉と12歳の弟-の三人は小さな田舎の町を離れ,新しい町で新しい暮らしを始める。そして,ひと夏を渓谷の丸田小屋で過ごすことになるのだが,「森林管理官」と名乗る不思議な老人との出会いが姉弟を大きく成長させていく。

  豊かな自然を抱える川とのふれあい,壊れそうな家族のきずな,思春期のみずみずしい感性,一徹な老人の自然を守る強い意思,さまざまな人の思いがほとばしるように溢れ出し交錯し,結末では静かな感動をよびおこす。

中学生以上にすすめたい作品。

児童書おすすめの一冊。中学生以上向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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ペニー・フロム・ヘブン


ジェニファー・L・ホルム著 もりうちすみこ訳

ほるぷ出版 2008年 1400円

 1953年のアメリカ、ニュージャージー州に住む11歳の少女、ペニーの物語です。

 バター・ペカン・アイスクリームとプールと野球が大好きで、母親と母方の祖父母、犬のスカーレット・オハラとともに暮らしています。幼い頃に亡くなった父親が、ビング・クロスビーの熱烈なファンだったため、自分の名前は「ペニー・フロム・ヘブン」という歌からとったのだと、ペニーは信じていました。

 母親が働いているので、家の食事はすべて祖母が作りますが、その料理は「命の危険を感じる」ほどにまずく、毎度の食事風景はさびしいものです。

 それに対して、父方のファルーチ家はイタリア系移民で、そこでの生活習慣はまったく違います。毎週日曜の夕食は、午後早くから親戚全員が集まって、にぎやかに食卓を囲みます。山ほどのおいしい料理が並び、たっぷり半日かけて、食べたり飲んだり話をしたりして、やがて夜中の2時になると、大人たちはトランプをするのです。しかし、そんな明るく楽しいファルーチ家と、ペニーの母親はなぜか距離を置いています。

 ペニーは父親の記憶がありません。父親について、母親が何も話してくれないことを、不満に思っています。さらに、牛乳配達員のマリガン氏と母親の再婚話が持ち上がり、憂鬱な日々を送っていました。そんなある日、ペニーは大怪我をおってしまいます。それをきっかけに、父親の死の真相と、自分の名前の本当の由来を知ることになるのです。

 第二次世界大戦中のアメリカで、「敵住外国人」とされたイタリア系移民の境遇が、ストーリーのポイントになっています。多彩な登場人物は魅力的で、ペニーの成長と家族の絆や希望が感じられる結末はさわやかです。

 児童書おすすめの一冊。中学生向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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龍の腹


中川なをみ作

くもん出版 2009年 1500円

 老舗の呉服問屋に生まれ、何不自由なく育った8歳の太郎は、「焼き物の技術を学びたい」という父の夢に引きずられ、九州の博多から父とともに中国に渡ります。

 時代は南宋時代末期。「希龍」と名を変えた太郎は父と二人で当時の青磁の一大窯、龍泉を訪れますが、父は焼き物を学ぶにはもう年齢的に難しいといわれ、代わりに希龍のみが龍泉に残され修行することになります。

 父に捨てられたと思いながら土にまみれて働くうち、希龍は次第に陶工という仕事の素晴らしさに魅せられていき、その才能を認められるようになります。

 20歳になった希龍は父と再会しますが、父の関心は政治へ移っており、さらに修行を重ねたい希龍は父と別れ、景徳鎮へ向かいます。戦乱に否応なく巻きこまれる暮らしのなかで、希龍が様々な困難を乗り越え、やがて家族を得るまでの波乱万丈の物語。

 8歳から36歳までの希龍の成長を中心に時代や社会の様相が描かれており、読み応えのある作品です。

児童書おすすめの一冊。中学生から一般向き。

紹介:調布市立図書館 児童担当

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ロジーナのあした 孤児列車に乗って


カレン・クシュマン作 野沢佳織訳

徳間書店 2009年 1470円

 ロジーナは12歳,ポーランド移民のパパは詩を描きつつ家族のために食肉加工場で働き,優しいママとかわいい2人の弟がいて貧しくとも幸せな生活を送っていました。ところが,パパは加工場の事故で亡くなり,2人の弟は焼死し,残されたママも発疹チフスにかかりロジーナの看病の甲斐もなく帰らぬ人となりました。

 孤児となったロジーナは,1881年孤児列車に乗せられて,アメリカ中部のシカゴから西部のサンフランシスコに向けて養い親になってくれる人を探す旅に出発したのです。孤児たちはロジーナを入れて全部で22人いましたが,一番年長のロジーナは引率の冷たい感じのする女のお医者さんから,小さい子の面倒をみるように頼まれてしまいます。(ロジーナ自身,奴隷にされるのではと不安でたまらなかったというのに。)

 列車が止まるたびに,子どもたちは次々に養い親に引き取られていきます。ロジーナは大草原の穴倉に住む肺病を病む奥さんのいる子だくさんの一家に引き取られますが,その家の主人は病気の妻が亡くなったあと,ロジーナを妻にするつもりだったのでした。そんな,ロジーナを救ってくれたのは病気の奥さんの「その子の人生をだいなしにしないで」の一言でした。ロジーナは連れ戻され孤児列車の旅を続けて行きます。

 その後も,ロジーナは新聞広告で見ず知らずの人の元に花嫁となって嫁いでいく女性や,土地をだまし取られた先住民の人たちとの出会いを通して成長していきます。

 今のこの現実が夢だったらどんなにいいだろう,ママが,「お帰り」と私を迎えてくれたら……といつも思っていたロジーナが,しっかりと現実を受け止め,冷淡だと思っていた女医さんと心を通わせ,新たなる一歩を踏み出していく結末は感動的です。

児童書のおすすめの一冊。中学生向き

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ぼくだけの山の家


ジーン・クレイグヘッド・ジョージ作 茅野美ど里訳
偕成社 2009年 1680円


 五月のある日,少年サムはニューヨークの家を出て曽祖父の住んでいたキャッツキル山脈にある深い森に向かいました。手にしていたのは,ペンナイフ,ひも一巻き,斧,火打ち石と火打ち金,アルバイトでかせいだ40ドル。サムは森の中で一人で生活をしようと思ってやってきたのでした。

 最初は火をおこすこともうまくいきませんでしたが,ビルというおじいさんに教えてもらい,なんとかうまくできました。ベイツガという大木のうろをすみかとし,カラスの巣から卵をとってきて食べたりします。やがてハヤブサのフライトフルという相棒もでき,うさぎ,木の実などの食べ物を調達できるようになります。またヒッコリーの木ぎれを煮つめて塩を作ることにも成功しました。そんな中でサムの大好物となったのはカエルです。やわらかく煮たカエルの肉に野生タマネギ,スイレンのつぼみ,ノラニンジンを加え,ドングリの粉でとろみをつけ,カメの甲羅をお皿にして盛りつけます。

 クリスマスには心配したお父さんが様子を見に来てくれますが,サムがちゃんと生活しているのをみて安心して戻っていきます。そうして一年たったある日のこと,サム一人での森の生活は終わりを告げることになりますが……。

 大自然のなかで自分なりの工夫をし,たった一人で生活をする少年の成長していく姿にぐいぐい引き込まれ,一気に読み進みます。サムの自立を認めてくれるお父さん,サムと一緒に曽祖父の森を見つける手助けをし,サムの伸びすぎた髪の毛を切ってくれる図書館司書のミス・ターナーさん,偶然出会った大学の先生のバンドウさんなど,サムをさり気無く応援してくれる大人たちの存在も魅了的です。

 サムと一緒に冒険をしたような満足感を味わうことができる作品です。


児童書のおすすめの一冊。中学生向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

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靴を売るシンデレラ


ジョーン・バウアー著  灰島かり訳
小学館 2009年 1575円


 主人公ジェナは16歳の女の子で,自分の容姿に自信がありません。父親のアルコール依存症で両親が離婚,妹はモデルを目指す美女,大好きだったおばあちゃんはアルツハイマーの症状が進行するなど,ジェナの悩みは尽きません。

 ジェナはグラッドストン靴店でアルバイトをしており,靴を売ることにかけてはとても優秀な店員で,お客様ひとりひとりにぴったり合う靴を心をこめて売っていきます。

 夏休みがきてジェナは,靴店の女性社長の運転手としてテキサスまで行くことになりました。旅を続けていく中で、ジェナは社長のおかれている状況を知ることになります。社長の息子であるエルデン副社長は、粗悪品である靴の販売を推進し,さらに会社をライバル店に売却することを企んでいたのです。そのことを阻止しようと奮闘している中で、素晴らしい出会いを経験しますが…。

 靴を売る才能でジェナは社長に見込まれて運転手として雇われ、さらに自分で考えて行動していくことで社長のアシスタントとしての地位も築いていきます。ジェナが成長していく姿がユーモアたっぷりに描かれていて,楽しく読むことができます。

 どんなときでも希望を捨てない一生懸命な姿は,読者に勇気を与えてくれます。青春物語でありながら「靴」を売る仕事の哲学を,自分の仕事に置き換えることができ,大人になってからも読みたいと思わせる作品です。

児童書おすすめの1冊 中学生向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

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ライオンとであった少女


バーリー・ドハーティ 著 斎藤倫子 訳
主婦の友社 2010年 1680円


 それぞれ別のアフリカ・タンザニアの黒人と白人の間に生まれた二人の少女の話が交互に語られる物語。

 アベラは9歳、タンザニアの田舎に住む少女。父の死後,母を連れて病院へ行く途中白人の女性が見かねてお金をくれたにもかかわらず,その母もエイズで亡くなった。アベラの人生は転がるように変わっていく。突然帰ってきた叔父はイギリスでの不法滞在を合法化するため実子と偽ってアベラを無理やりイギリスに連れ出す。

 アフリカを遠く離れアベラの居場所はどこにもなかった。外に出ることも姿を現すこともできない生活が始まるがアベラは檻のような部屋から飛び出した。表を歩く子どもたちにくっついて行った先の学校でアベラはわずかな英語力で自分の身の上を訴えた。アベラは正式にイギリスで暮らすことが許され,養子縁組で里親が見つかるまで仮里親の世話になるが,この家庭にはアベラのような子どもが出たり入ったりしていた。

 祖母のもとで暮らしたいアベラは,タンザニアに帰ろうと決心し仮里親のもとを逃げ出した。途中危険な男の手を逃れ助けられた家でアベラははじめて担当のソーシャルワーカーに出会った。このワーカーこそ母を助けようとしてくれたあの白人女性だった。そしてもっともアベラにふさわしい里親が見つかることになる。

 一方ローザは13歳,イギリスのシェフィールドに住む少女。母親と二人暮らしだが,近くに住む祖父母にも愛情を受けて,母娘共通の趣味を楽しみながら,豊かに暮らしていた。だが,ローザの悩みは母が里子を欲しがっていること。自分の知らないうちに「養子縁組協会」のカウンセラーに相談していた。ローザは自分がいるのに,なぜ母は他の子どもを欲しがるのか分からないし許せない。カウンセラーはローザに本当の気持ちを素直に書くようにとノートをくれた。やがてローザは母が本心から愛情深く困っている子どもを助けたい一心であること,その母の気持ちを理解して,ローザは一歩成長し養子を迎えることを承諾する。

 厳しい環境の中に生まれ必死に生きるアベラとそれと対照的に豊かな生活をするローザ,二人の暮らしと心の中を丁寧に描いた作品。悲惨な生い立ちながらもそれに立ち向かっていくアベラの勇気と賢さに感動するとともに,母も祖父母もカウンセラーもローザに無理強いをせず,ローザの気持ちが自然に新しい家族を受け入れられるように変わっていくことを許容する環境がすばらしい。

 タイトルは次の事件から取ったと思われる。母親を失い抜け殻のように歩くアベラの目の前に突然ライオンが現れた。この危機一髪のとき,「強くなりなさい。私のアベラ。強くなるのよ」と母の言葉が何度も響き,父も祖母も傍らに立ち自分を支えているのを感じた。死にたいと思っていたアベラは,ライオンとであったとき実は自分が生きたいと思っていることを知ったのである。


児童書 おすすめの1冊 中学生向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

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ピーティ


ベン・マイケルセン 著 千葉茂樹 訳
鈴木出版 2010年 1575円


 1920年,アメリカモンタナ州でピーティは重い障がいをもって誕生しました。医者は「この子は考える力そのものをもっていません」と重度の知的障がい者と診断しますが,両親は必死の思いでピーティを大切に育てます。やがて治療代も払えなくなった両親は,2歳になったピーティを専門の施設に入れる決断をします。

 当時の施設は,病気や障がいの程度も種類もさまざまな人たちが一緒にいて,食事と身の回りの世話をするだけの収容施設でした。自分では体を動かすことも言葉も話せないピーティは無能と決め付けられ,全く希望のない環境に長い間放置されます。

 しかし,ピーティが12歳になったとき,軽い知的障がいの9歳の少年カルビンが入所し,カルビンとの交流によってピーティは本来持っていた明晰な頭脳や明るい性格が引き出されていきます。また施設の職員の中には,よき理解者も現れ,中でもオーウェンは二人にたくさんの喜びと楽しみをもたらします。

 やがて年老いたオーウェンが去ったあと,ピーティとカルビンにも突然の別れが訪れます・・・。

 障がい者の一生という深刻なテーマを扱っていますが,どんな厳しい環境におかれても人生を楽しむ主人公ピーティの存在が力強く,周囲の人たちに幸せを与えていくというストーリーは感動的で,一気に読み進むことができます。後半,ピーティが老人になってからの予想外の展開は,熱い涙を誘うことでしょう。

児童書 おすすめの1冊 中学生向き

紹介:調布市立図書館 児童担当

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『おとなりさんは魔女―アーミテージ一家のお話1―』


ジョーン・エイキン作 猪熊葉子 訳
岩波書店 2010年 714円


 アーミテージさん夫妻の奥さんは、新婚旅行の海岸で穴のあいている石を見つけます。その石には願い事をかなえる力がありました。奥さんは「これから先、ずっと退屈しませんように」と願います。

 それからというもの、アーミテージ一家には次々と不思議な出来事が起こります。家の庭に騎士がやってきて戦いをしたり、食料貯蔵室にある袋入りのじゃがいもが、全て美しいヴェネツィアングラスのりんごにかわってしまったり、魔女がお隣で幼稚園を開いたり、家が魔法使いの研修所にされそうになったこともありました。退屈する暇なんてありません。でもこれは、すべてアーミテージ奥さんが願ったことなのです。

 不思議な出来事は、月曜日に起こるということに慣れっこになっていた一家。ところが月曜日でない、火曜日にもとんでもないことが起こります。庭に美しいユニコーンが100頭もやってきたのです。

 『アーミテージ一家のお話』は全3巻のシリーズです。第1巻には、この「火曜日のふしぎ」を含め8編の短編が収録されています。

 アーミテージさん夫妻と2人の子どもたちは、とてつもないことがふりかかってきても、くじけることはありません。どんなときも慌てず対応していく様子がユーモラスでこの物語の魅力の一つです。

 著者の奔放な想像力、空想力から描きだされる物語は、読者の心をとらえ物語の世界に引き込みます。次はどんな事件が起こるのか?この一家から目が離せません。

児童書 おすすめの1冊 中学年から

紹介:調布市立図書館 児童担当

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ボグ・チャイルド


シヴォーン・ダウド作 千葉茂樹訳 ゴブリン書房

2011年 2000円


 物語の舞台は1981年の北アイルランド。国境近くの村で暮らす主人公の高校生ファーガスは,よく小遣い稼ぎのために,叔父のタリーと泥炭を盗みに湿地(ボグ)へ出かけていました。しかし,ある日出かけた先の湿地で,ファーガスは一人の少女の遺体を発見します。金の腕輪をしたその少女の遺体には,絞殺された跡がありました。この少女は一体いつ,どこで,誰に殺されたのか。遺体の調査のために村を訪れた考古学者の母娘と共に,ファーガスは遺体の謎を追います。

 一方,アイルランドの独立を目指すファーガスの兄ジョーは,過激なテロ活動で知られるIRA暫定派の一員で,政治犯として服役中でした。しかし,彼はその獄中で,自分達の要求が受け入れられるまで一切飲食をしないという「ハンガー・ストライキ」を決行します。このままジョーを死なせるわけにはいかないと悩むファーガスは,友人から持ちかけられた「運び屋」の仕事を引き受けることになります。

 この作品の舞台となった1980年代の北アイルランドは,「北アイルランド問題」という複雑な政治問題で大きく揺れていました。政治に全く興味のないファーガスも,この問題に否応なく巻き込まれていきます。周囲の状況に翻弄されながらも,友情や恋など様々なことを経験し,自分にできることを探っていくファーガスの姿が,この作品では鮮やかに描かれています。

 衝撃的な展開が待ち受ける最後まで,読者をぐいぐいと引っ張ってくれる1冊です。

児童書 おすすめの1冊 中学生から

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ピッグル・ウィッグルおばさんの農場


ベティ・マクドナルド作 小宮由訳

岩波書店 2011年 680円


 大うそつきの男の子、動物が大好きだけどついうっかり世話を忘れてしまう女の子、何でも分解して壊してしまう男の子…。両親の手に負えないそんな子どもも、ピッグル・ウィッグルおばさんの農場に行けばみんなおばさんが大好きになり、いつの間にか欠点も直ってしまいます。おばさんは、魔法をつかう訳でも、勿論お仕置きをする訳でもありません。子どもときちんと向き合い、一人前に扱って、犬や猫、牛や馬、豚、人間の言葉を話すオウムなど、農場のいろいろな動物たちの世話をさせるだけなのです。
 本書には、ピッグル・ウィッグルおばさんと子どもたちのお話が5話入っており、次はどんな子どもがやってくるのか、子どもたちはどんな風に変わるのか、読み進むのが楽しくなります。ピッグル・ウィッグルおばさんの他のお話は1978年に学習研究社から出版されたことがありますが,農場の話は今回が初訳。ユーモラスで温かみのあるモーリス・センダックの挿絵もお話にぴったりです。

児童書 おすすめの1冊 小学校中学年から高学年向き 

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