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このページは、2006年09月12日 15:23に投稿された記事 「父の旅 私の旅」です。

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「父の旅 私の旅」

藤原正彦著

藤原正彦は作家新田次郎と藤原ていを両親に持つ数学者でエッセイストである。
この本は,新田次郎の最後の作品「弧愁 サウダーデ」の取材先であったポルトガルを,息子の藤原正彦が父の足跡を辿って旅した紀行文である。

海軍軍人であり作家であり神戸駐在ポルトガル副領事であったポルトガルの人モラエスは,徳島出身のヨネと結婚してから75歳で没するまで,故郷への深い想いに身を焦がしながらも心から愛した日本で生き続けた。
この孤高の人モラエスの想いに惚れ込んだ新田次郎が,最後に書いた作品「弧愁 サウダーデ」の取材に,モラエスを育てた国の自然・人・風土を自分の目で確かめるためにポルトガルを訪れた。そしてまた,その息子藤原正彦が父の取材ノートを携えて同じルートを辿りながら一人でかの地を旅行したのである。

モラエスの生家を訪れ,彼の望郷の想いを自分のものとしてやってきた父,そして父の想いを自分の想いとして作者が立つ。
望郷・懐かしさ・会いたいが会えないもどかしさ,これがポルトガルの「サウダーデ」である。父の想い・魂が自分に乗り移ったような気がして,モラエスの「サウダーデ」を追求することが父の「弧愁」の執筆の動機だったのだと確信した。

何の前触れもなく突然に訪れた父新田次郎の死を,現実のものとして受け入れることが出来なかった作者にとってはこの旅は大切なことであった。

 「ポルトガルの同じ空気を吸い,同じ人々と話し,同じレストランで同じ料理を食べ,同じ酒に酔い,父の想い出に溺れるほど浸りたかった。そうすることであっけなく私の視界から去ってしまった父にもう一度会えるような気がした。」と作者は述べている。

宮の下読書会    中川輝江


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